周囲に要介護者(介護を受ける人)がいないと、介護は自分に関係ないと思いがちです。が、介護者(介護をする人)になる日は突然やってきます。その時に知識がないとどうすべきか分からず、精神的に追いつめられることに。そうならないために知っておくべきことを、介護者のサポートをしている阿久津美栄子さんに、伺いました。
阿久津さんは「介護は終わりが見えない=生活や経済面での不安がつきまといます。介護には基本的に四つの道のりがあり、これを把握しておくと、自分がすべきことを客観的に判断しやすくなります」と言います。
前の記事「ある日、突然「介護者(介護する人)」に。そのきっかけは?/身近な人に介護が必要になった時のために(1)」はこちら。
介護の道のりは「混乱期」「負担期」「安定期」「みとり期」に分類できます
まずは「混乱期」。介護の始まりは、家族の「否定」から入ります。例えば認知症の場合、健康が当たり前だと思っていたので行動の異変に驚き、周囲は現実をすぐには受け入れられません。要介護者の変化を受容するには、時間が必要です。この突然の事態に備え、介護についてあらかじめ学んでおきましょう。
次に「負担期」が訪れます。要介護者にも介護者にも、疲労感が出てくる時期になります。例えば認知症で要介護3の場合、できないことが増えてきます。要介護者は家族に思うように気持ちを伝えられなくなり、不安で混乱し、時には暴力をふるうといった行動をとることもあります。介護者も負担が増えることで絶望的な気持ちになります。
そして「安定期」へ。例えば要介護4~5の場合、要介護者の多くは寝たきりの状態です。動くこともままならず、施設への入所を考えます。この頃には介護する家族は状況を割り切って考えられるようになり、要介護者の状態を受容できるようになります。この状況がどれだけ続くかは人それぞれです。しかしこの比較的落ち着いている時期に、介護が終わるときのことを想定し、最期の過ごし方や亡くなった後のことを家族で話し合うことも大切です。
最後に「みとり期」です。介護の終末もある日突然訪れます。介護する家族は否定と絶望を味わうことになります。またこの時期には延命治療や遺産相続などで多くの家族がもめてしまうのが現実です。そうならないよう、元気なうちに、介護施設や治療、相続などについて家族で相談しておきましょう。
後編:「自分を追い詰めないために、介護を「見える」化する!/身近な人に介護が必要になった時のために(3)」はこちら。
阿久津美栄子(あくつ・みえこ)さん
1967年生まれ。NPO法人UPTREE代表(http://uptreex2.com/)。NPO法人介護者サポートネットワークセンターアラジン理事。子育て中に両親の遠距離介護を経験し、介護者の居場所を作る活動を行う。2016年、母子健康手帳の介護版ともいえる「介護者手帳」を制作。