長く続いたデフレのトンネルから脱しようとする日本。しかし、世の中的に景気がよくても、それを実感できていない人は多いのではないでしょうか? 老後破産や格差社会の不安が広がる昨今、自分を守るために必要なのが「お金の教養」です。
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株価は未来を知っている !?
インフレ率2%を達成して金融緩和が終わっても、安倍政権が続く限りマネーバブルも続くでしょう。9月に安倍氏が自民党総裁に再選されれば、任期は2021年の9月まで。そのときまでは続くことになりますが、政権が終わる半年前には、株価はいったん下がると考えられます。
安倍氏が退場すれば金融政策も変わる、と考える投資家が売りに走るからです。ここで着目すべきは、実際に政権が終わる「前から」、その現象が起こるということです。
私も、2021年9月に任期が終わることが確実になったら、2020年の年央、遅くとも年末までの間の一番高値のところで売るつもりでいます。これが、投資家心理というものなのです。
そうした投資家心理も、株価の波に大いに影響を与えます。消費税が8%に上がった際に株価が大きく落ちたのも、施行の半年前でした。景気も同じく停滞しましたが、それは増税の施行後でした。つまり、株価が景気に先行したのです。
通常のセオリーで考えると、景気が悪化する→企業業績が悪化する→株価が下がる、という順番になりそうですよね。ところが、短期の相場では株価が景気に先駆けて動く、ということが起こります。数カ月、早いときは1年先行して、投資家の「警戒心」もしくは「弱気」が、株価に影響するのです。
「株価は未来を知っている」とは、そういうことです。2019年 10 月に消費税が 10 %に上がる影響で株価がいったん下がる、従って2019年の4、5月から半ばが天井になるという話も、この影響を考えてのことです。その際もまず株価が下がり、 10 月の施行後には景気の一時停滞も起こるでしょう。
目先の相場観より大局観と中勢観を養おう
とはいえ、それはあくまで一時的な話です。再三お話しした通り、長い上昇トレンドはそう簡単には終わりません。再び、株価の波のことを思い出してみましょう。波には短期・中期・長期の波があると話しましたね。このうち短期サイクルは、目の前の「相場観」を反映します。
「今」上がると思うか下がると思うか、という予測です。テレビの株式ニュースや日経新聞などでエコノミストやアナリストが毎日述べている見解は、短期サイクルの話。日々の売り買いの判断材料として、主にプロが参考にするものです。
株と言えばこの相場観をイメージする人が多いのですが、これはあくまで目先の見通しに過ぎません。きちんと見るべきは、中期と長期のサイクルなのです。中期のサイクルを見極める視点のことを、「中勢観」といいます。いつごろ底打ちして、いつごろ上がってくるだろう、という考え方です。
さらに大事なのが、長期サイクルを視野に入れて考える「大局観」です。一時的に下がっても、長期サイクルでは上昇が続くとわかっていれば、アタフタすることはありません。先日の株価急落がいい例です。
さらにいえば、下がった瞬間こそ買いのチャンス、ということもわかります。長い目で見れば上がることを知っているので、小さな谷(押し目)で買って、高値をつけたときに売って得をする、といったこともできるわけです。ここがわかっていないと、一時的な急落で青くなって売る、という失敗をします。こういう人は、羅針盤なしで船に乗っているようなものです。
大局観があれば、投資スタンスが確かなものになります。マネーバブルの大波に乗るノウハウは、決して闇雲な離れ業ではありません。大局観という羅針盤を拠り所にした技術なのです。
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スガシタパートナーズ株式会社代表取締役。国際金融コンサルタント。投資家。学校法人立命館 顧問。メリルリンチをはじめとする名門金融機関で活躍後、現職。
変化の激しい時代に次々予想を的中させることから「経済の千里眼」の異名をもち、政財界にも多くの信奉者をもつ。『今こそ「お金の教養」を身につけなさい』(PHPビジネス新書)、『マネーバブルで勝負する「10倍株」の見つけ方〔2018年上半期版〕』(実務教育出版)など著書多数。
(菅下清廣/KADOKAWA)
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