生きていると、何回か相続を経験する可能性があります。一般的には夫の両親や自分の両親、そして配偶者などの相続です。この相続によって、それまで家族関係に何ら問題なかった親族、あるいは兄弟姉妹の関係が一変することが多々あるようです。つまり、もめるのです。
少しでももめない相続にするにはどうすればいいのか、相続問題に詳しい税理士の板倉京先生にアドバイスを伺いました。
血がつながっている家族でさえもめてしまいます
例えば、父親が残した不備のある遺言書によって、仲の良かった兄弟に遺産を巡る争いが起こり、その後ずっと不仲になってしまうケース。または、子どものいない夫婦の夫が亡くなり、これからどうやって生きていこうかと思っていた矢先、義父から夫の財産を寄こせと請求されるケースなどです。血がつながっている家族でさえもめるのですから、血がつながらない間柄なら、なおさらかもしれません。
相続の順番は第1順位から始まる。子どもがいれば配偶者と子どもで分ける。子どもがいない場合は、配偶者と被相続人の父母で分ける。子どもも父母もいない場合は、配偶者と被相続人の兄弟姉妹で分ける。
5000万円以下の遺産分割でもめる件数が全体の半分以上です
それでは、相続のもめ事はどれくらい起きているのでしょうか。家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割調停などの件数をみてみると、年々増加傾向にあります。資産家の人たちがもめているイメージがあると思いますが、そうでもないようです。最高裁判所の司法統計年報によると、5000万円以下の遺産分割でもめる件数が、全体の半分以上を占めています。もしかしたら、「相続はもめるもの」なのかもしれません。
とはいえ、少しでももめない相続にするにはどうすればいいでしょうか。板倉先生は以下の5カ条をあげています。
◎もめない相続にするための5カ条
1. 生前贈与など相続方法を考える
2. 遺言書を作成する
3. 成年後見制度を確認する
4. 生命保険を利用する
5. 親や兄弟と親交を深めておく
2.の遺言書について。遺言書には公正証書遺言と自筆証書遺言があります。公正証書遺言は、証人や書類、手数料がかかりますが、公式な文書となり公証役場で原本が保管されます。一方、自筆証書遺言は、費用もかからずいつでも書けるなど手軽に作成できます。ただし、全て自分で書くため法的に正しく作成し、保管も自分でする必要があります。
次の記事「義母の介護中に夫が亡くなり、すぐに義母も他界。妻の住む家がなくなる...どうすればいい!?/もめない相続 (2)」はこちら。
取材・文/金野和子
板倉 京(いたくら・みやこ)先生
税理士。女性開業税理士で組織された㈱ウーマン・タックス代表。相続・贈与等個人資産に関する税務・保険が得意。講演活動も行う。著書に『夫に読ませたくない相続の教科書』(文春新書)などがある。