視界がおかしい...僕の「がん細胞」は「両眼」にまで転移していて/僕は、死なない。

「病気の名前は、肺がんです」。医師からの突然の告知。しかも一番深刻なステージ4で、抗がん剤治療をしても1年生存率は約30%だった...。2016年9月、50歳でがんの告知を受けた刀根 健さん。残酷な現実を突きつけられても「絶対に生き残る」と決意し、あらゆる治療法を試して必死で生きようとする姿に...感動と賛否が巻き起こった話題の著書『僕は、死なない。』(SBクリエイティブ)より抜粋。過去の掲載で大きな反響があった本連載を、今回特別に再掲載します。

※本記事は刀根 健著の書籍『僕は、死なない。』から一部抜粋・編集しました。 
※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

【前回】鏡に映った「がんの自分」の身体に唖然...いよいよ始まった「アレセンサ」の服用

視界がおかしい...僕の「がん細胞」は「両眼」にまで転移していて/僕は、死なない。 85734e9335eb5447da00b2fe311f8854b072aa29.jpg

アレセンサを服用し始めた頃、視界がおかしいことに気づいた。

以前から右眼は黒っぽいシャッターが半分くらい降りていた。

それは放射線治療が終わっても変化はなかった。

視界に関しては、斉藤先生の話から2カ月くらいすれば治ると思っていたのだが、どうもそのシャッターが茶色っぽく変色し、さらに下に降りてきていた。

右眼で青空を見ると、青ではなく緑色の空が広がっていた。

緑の空はSFの異世界みたいだ。

また、眼球を上下に動かすと、視界の隅に毛細血管が現れた。

自分の眼の血管が見えるというのも、不思議な感じだ。

僕の毛細血管は美しかった。

きれいだなー、ベッドに寝ながら僕は自分の毛細血管を鑑賞した。

しばらくすると、右眼の中央が歪み始めた。

視界の真ん中だけが魚眼レンズのように歪んでいた。

四角のビルが、台形に見えた。

おかしいな、なんだろう、これは。左眼もおかしくなっていた。

視界中央の下に茶色のハートが出現した。

眼球を動かすと、ハートも一緒についてくる。

これは本当に脳腫瘍なんだろうか?

もしかして、眼の問題じゃないんだろうか?

翌朝、嶋田さんに報告した。

「はい、すぐに先生に報告しますね」

嶋田さんはそう言うと、すぐにステーションに向かった。

しばらくすると若葉先生がやってきた。

「どうしました?」

僕は自分の視界について詳しく説明をした。

「先生、もしかして脳腫瘍の影響じゃなくて、眼が原因って考えられないでしょうか?眼を調べてもらうことって、できます?」

「わかりました。手配します」

若葉先生はそう言うと、いったん出ていき、しばらくすると戻ってきて言った。

「今日の午後に眼科の予約が取れました。そこで詳しく調べましょう」

「ありがとうございます」

さすが、ここが総合病院の強いところだな。

昼過ぎ、眼科の外来へ向かった。

眼科は多くの人でごった返していた。

眼科は直接命には影響の少ない病気のせいだろうか、呼吸器内科に来ている人に比べ、表情に悲壮感が少ないように感じた。

小1時間ほど待っていると名前を呼ばれた。

検査の準備ができたらしい。

案内された部屋には眼の検査機器が所狭しと並んでいた。

「では、ここに座って、こちらを見てください。まずは右眼からです」

言われるままに検査機を見つめた。

「はい、正面を見てーはい、右ー......」

そんな感じで、次々と検査を受ける。

1時間以上かけて、ありとあらゆる検査を受けた。

「検査の結果は先生に回しておきますので、お名前を呼ばれるまで診察室の前の椅子でお待ちください」

僕は診察室前の長椅子に座った。

僕の横で何やら男性が看護師に話し込んでいるのが聞こえた。

どうやら眼の手術が決まったらしい。

「どうしてもダメでしょうか?」

「はい、すみません、決まりなので」

「でも、取りたくないんです。絶対に」

「すみません、そういう決まりになってまして......」

「どうしてもダメなんですか?本当に?」

「はい、すみません」

何を困っているんだろう?

僕は耳を傾けた。

「実は、これカツラなんです。私、これは取りたくないんです......」

男性はがっくりと肩を落とした。

おお、カツラか......でも、カツラ取ったって死なないし......。

なんだか微笑ましかった。

「刀根さーん」

僕の名前が呼ばれた。

僕は診察室に入った。

そこには痩せた若い医師が座っていた。

「刀根さんは、えーっと、肺がん......ですよね」

「ええ、そうです。ステージ4です」

医師の顔が一瞬、固まった。

「えーっと、で、刀根さんの眼の検査をいろいろとさせていただきまして......」

医師の歯切れが悪い。

「はあ、で?」

「実は眼に腫瘍が見つかりました」

「腫瘍ですか?」

「はい、肺がんが眼に転移したものだと思われます。これは、非常に珍しいケースです」

「そうなんですか」

僕のがんは本当に働き者だ。

「で、両眼です」

「ほう!」

「右眼の歪みも、左眼のシミも腫瘍が原因だと思われます。えーっとですね......」

医師は眼の図を描いて、詳しく説明を始めた。

「刀根さんの場合、外から光が入ってきて、ガラス体を通して画像を映す膜、網膜という場所があるのですが、そこに腫瘍ができていることがわかりました。なので、シミや歪みが見えるのだと思います」

「そうなんですか......」

「眼の腫瘍は非常に珍しいので、当院にも専門家はいません。明後日、眼の腫瘍、眼内腫瘍の専門家が当院に来ますので、もう一度、その専門家の診察を受けてください」

「わかりました」

僕は眼科を後にした。

まさか、眼にまで転移してるとは......。

ま、いいか、眼じゃ死なないし。

 

刀根 健(とね・たけし)

1966年、千葉県出身。東京電機大学理工学部卒業後、大手商社を経て、教育系企業に。2016年9月1日に肺がん(ステージ4)が発覚。翌年6月に新たに脳転移が見つかるなど絶望的な状況の中で、ある神秘的な体験し、1カ月の入院を経て奇跡的に回復。ほかの著書に、人生に迷うすべての現代人におくる人生寓話『さとりをひらいた犬 ほんとうの自分に出会う物語』がある。オンラインサロン「みんな、死なない。」および刀根健公式ブログ「Being Sea」を展開中。

この記事は『僕は、死なない。 全身末期がんから生還してわかった人生に奇跡を起こすサレンダーの法則』(刀根 健/SBクリエイティブ)からの抜粋です。

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