「年金は繰り上げてもらった方がいいのか、繰り下げてもらったほうがいいのか」、「夫が亡くなったらどうなるのか」などの気になる疑問に、年金に詳しい社会保険労務士の望月厚子さんに答えてもらいました。
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Q 老後の年金はどんな人がもらえるの?
A 国民年金を納めた期間などが10年以上でもらえます
老齢年金をもらうためには、必要な資格期間があります。例えば、国民年金や厚生年金の保険料を納めた期間や、会社員などの妻が対象の第3号被保険者であった期間を合算した場合に10年以上あることです。以前は、この期間が原則25年以上でしたが、2017年8月1日から10年以上に短縮されました。短縮によって、老齢年金を受け取れる人が拡大しました。
なお、厚生年金の加入者が対象の老齢厚生年金は、10年以上の資格期間を満たし、かつ1カ月でも保険料を支払えば上乗せされます。該当者にはすでに黄色の封筒などで案内が郵送されています。確認したい人は、最寄りの年金事務所などで相談してみましょう。
Q 年金の繰り上げと繰り下げはどっちがいいの?
A 一般的に健康に自信がある人は繰り下げです
国民年金の加入者がもらえる老齢基礎年金は、原則65歳からです。ただ、希望すれば60歳から65歳までの間で繰り上げたり、66歳以降に繰り下げることができます。
例えば「60歳からもらいたい」という人の場合、65歳でもらえる年金額を100%とすると、3割カットされた70%の年金額が一生続きます。カットされたことで年金の総支給額は約77歳より長生きすると、65歳からもらい始めるよりは少なくなります。
また、一度繰り上げをすると、後から65歳からの受給に戻すことができません。とはいえ、生活が大変だったり、病気をして医療費がかかったりという場合などは、繰り上げを検討することも大切です。
70歳からの繰り下げで1.42倍の年金額になります
一方、繰り下げの場合です。「いまは仕事をしているから、仕事をやめてから年金をもらう」という人のケースで見てみましょう。もし、70歳からもらい始めたとすると、65歳のときの1.42倍の年金額が一生続きます。しかし、もらい始めてすぐに亡くなった場合は、繰り下げの恩恵を十分に受けられません。
このケースで繰り下げた場合、総支給額は約82歳の時点で65歳からもらうよりも多くなります。自分は健康に自信があって70歳からの受給でも経済的に大丈夫という人は、繰り下げた方がお得です。ただ、65 歳以降に繰り下げてもらう前に亡くなった場合は、本人に代わって生計を同じくしていた遺族が、65歳の本来もらえた年金を未支給年金として請求し受け取ることはできます。
●1941年4月2日以降に生まれた人の繰り上げと繰り下げの受給率(%)
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取材・文/金野和子
望月 厚子(もちづき・あつこ)先生
社会保険労務士。ファイナンシャル・プランナー。一般社団法人新都心シニア生活サポート代表理事。年金などの相談業務の他、新聞や雑誌などへの執筆も行っている。