「今回の出版は...なしにしましょう」僕の携帯に届いた一通のメール/続・僕は、死なない。(30)

「50歳での末期がん宣告」から奇跡の生還を遂げた、刀根健さん。その壮絶な体験がつづられた『僕は、死なない。』(SBクリエイティブ)の連載配信が大きな反響を呼んだため、その続編の配信が決定しました! 末期がんから回復を果たす一方、治療で貯金を使い果たした刀根さんに、今度は「会社からの突然の退職勧告」などの厳しい試練が...。人生を巡る新たな「魂の物語」をお届けします。

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手放すということ

その日の夜だった。

僕の携帯がメールを受信した。

それは先日訪ねて原稿をチェックした出版社からだった。

メールの内容はこうだった。

「出版に対する方向性の違いがあるようです。今回の出版は残念ながら"なし"ということにしましょう。今までお疲れ様でした。これからもご体調にはお気をつけください」

...。

出版が、没になった...。

まただよ...

屋根に上って、はしごを外される...。

あの苦しかった6ヶ月は、一体何だったんだろう?

再発しそうになってまで、必死に書き上げたのに...。

そのとき、ふと年末に姉に言われたことを思い出した。

「なんでそんなおんなじことを、何度も繰り返すかってことよ」

「いつもそう。最後は『裏切られた』『許せない』って叫ぶの。どうしてそんなに繰り返すんだろう?」

「もしかすると、いや、たぶん、まだまだそこから学ぶことがあるってことなのよ」

学ぶ...

何を?

そう...

きっとそうだ!

手放せ!

手放せ!

手放せ!

"自分"が苦労して作り上げたものだからこそ、"手放す"んだよ!

そう、昼間、自分で言っていたことを思い出せ!

"僕"はしがみつく

"僕"は恐れる

"僕"は怒る

"僕"は叫ぶ

「僕は"被害者"だ」

「僕は"犠牲者"だ」

「僕は"不運"だ」

「僕は"かわいそうだ"」

そう...

全ての流れを滞らせていたのは、他でもない"僕"だったんだ。

自分の執着を手放すんだ!

自分の不安を手放すんだ!

自分の恐れを手放すんだ!

明け渡すとき、"僕"は消える。

何が何に、何を明け渡すのかって?

"僕"が"宇宙という全体"に"僕自身"を明け渡すっていうこと。

サレンダー...信頼。

目の前に起こったことを、考えずに、全信頼、100%受け入れる。

そこに"僕"は存在しない。

"僕"は、消えていなくなる。

そこには絶対的な信頼、絶対的な一体感と安心しか存在しない。

だからこそ、あとの展開は"宇宙にお任せ"状態になる。

手放すこと...を学ぶこと。

そうか、そういうことだったのか...。

突然の退職、本の出版が没になる、こういう出来事は全て僕の魂が"サレンダー"...つまり"僕"を手放すことを学ばせるため用意したイベントだったんだ...。

僕は、本の出版を完全に"手放し"た。

僕は、退職に関してのモヤモヤした気持ちも、全て"手放し"た。

そう、僕は"僕"を手放した。

そのとき、もう「被害者だ」「犠牲者だ」と叫んでいた"僕"は消え去っていた。

もう前の会社や、今回の出版社や編集者に対する「裏切られ感」を感じることはなかった。

それは全体から見ると、小さな"手放し"だったかもしれない。

でも、そこには東大病院で感じたあの『スッキリとした心地のよい空間』が、広がっていた。

【次回のエピソード】「きっとうまくいきますよ」再び動き始めた、ぼくの「夢」。

【最初から読む】:「肺がんです。ステージ4の」50歳の僕への...あまりに生々しい「宣告」/僕は、死なない。(1)

【まとめ読み】『僕は、死なない。』記事リスト
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50歳で突然「肺がん、ステージ4」を宣告された著者。1年生存率は約30%という状況から、ひたすらポジティブに、時にくじけそうになりながらも、もがき続ける姿をつづった実話。がんが教えてくれたこととして当時を振り返る第2部も必読です。

 

刀根 健(とね・たけし)

1966年、千葉県出身。OFFICE LEELA(オフィスリーラ)代表。東京電機大学理工学部卒業後、大手商社を経て、教育系企業に。その後、人気講師として活躍。ボクシングジムのトレーナーとしてもプロボクサーの指導・育成を行ない、3名の日本ランカーを育てる。2016年9月1日に肺がん(ステージ4)が発覚。翌年6月に新たに脳転移が見つかり、さらに両眼、左右の肺、肺から首のリンパ、肝臓、左右の腎臓、脾臓、全身の骨に転移が見つかるが、1カ月の入院を経て奇跡的に回復。現在は、講演や執筆など活動を行なっている。

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『僕は、死なない。 全身末期がんから生還してわかった人生に奇跡を起こすサレンダーの法則』

(刀根 健/SBクリエイティブ)

2016年9月、心理学の人気講師をしていた著者は、突然、肺がん告知を受ける。それも一番深刻なステージ4。それでも「絶対に生き残る」「完治する」と決意し、あらゆる代替医療、民間療法を試みるが…。当時50歳だった著者の葛藤がストレートに伝わってくる、ドキドキと感動の詰まった実話。

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