「無断欠勤、遅刻OKの会社」の狙いとは...森永卓郎さんが考える、高齢層にも朗報な「新しい働き方」

定期誌『毎日が発見』の森永卓郎さんの人気連載「人生を楽しむ経済学」。今回は、新しい働き方」についてお聞きしました。

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無断欠勤、遅刻OKの会社の狙いは?

先日、私が出演している『がっちりマンデー! !』(系列、日曜午前7時30分~)    という番組に「パプアニューギニア海産」という会社が登場しました。

その会社の働き方に関するルールは、私にとって衝撃的なものでした。

まず、社員が「遅刻する」とか「欠勤する」という会社への連絡が禁止されているのです。

遅刻や欠勤を禁止しているのではなく、その逆です。

社員は、無断で遅刻や欠勤をいくらしても構わないのです。

私はこれまでたくさんの会社をみてきましたが、そんな会社は一社もありませんでした。

普通に考えたら、そんな仕組みを導入したら、会社が回らなくなるのが明らかだからです。

ところが、社長の話によると、この仕組みを導入したことによって、離職率が下がり、出勤率はむしろ上昇したというのです。

その話を聞いて私は、かつてバラエティー番組で共演し、いまでも年賀状を交換しているプロサーファーの話を思い出しました。

サーファーの世界で、みんなから一番尊敬されるのは、よい波がきたときに、必ずそこにいる人だそうです。

ただ、よい波がくるのが分かるのは、直前です。

そのため、会社を突然休んでビーチに向かう必要があります。

「よいサーファーは、みな会社をクビになってしまうんですよ」と、知人のプロサーファーは、笑いながら話していました。

ただ、このパプアニューギニア海産の働き方が存在すれば、サーフィンと仕事の両立が可能になります。

だから、離職率が低くなるのは当然です。

そんなおいしい仕事を手放したいとは、思わないからです。

ただ、出勤率はなぜ上がるのでしょうか。

社長によると、「生活のために給料を稼がないといけないので、誰も休み続けることはできない。自由に休んだとしても、トータルとして働く日数は減らせない」ということでした。

さらに、この会社では「助け合い禁止」というルールもあります。

会社では社員に「どの種類の仕事をしたいか」をアンケートして、そのなかで担務を割り振っています。

だから、自分の得意でない仕事の人を助けたとしても、効率が落ちるだけだというのです。

ジョブ型雇用は高齢層に向く働き方

私は、ここまでの話を聞いて、これが究極の「ジョブ型雇用」ではないかと考えるようになりました。

これまでの日本の働き方は、「メンバーシップ型」と呼ばれて、採用時に、仕事内容を明確に規定せず、会社の都合で配置転換や転勤を命ずることができました。

会社の都合で職業人生が決まってしまうことの代償として、年功序列と終身雇用が保証されてきたのです。

会社が勝手に仕事を決めてしまうのですから、それは当然のことです。

いわば、「不自由と会社責任」のシステムが、日本型の雇用慣行の正体でした。

一方、アメリカの雇用制度はジョブ型で、採用時にどの事業所のどういった仕事内容で働くかが明確に決まっています。

定期昇給はなく、給与は採用時のままです。

昇進したいのであれば、そのポストの公募に社外の人と一緒になって選考を受けなければなりません。

転勤もありません。

新しい事業所に異動が必要な場合は、会社負担の出張で、現地のさまざまな環境を見に行き、本人がそこで働きたいと言った場合だけ、異動が行われます。

こうしたアメリカの仕組みは、いわば「自由と自己責任」の仕組みと言えます。

自分で選んだ仕事だから、その責任は自分で取るのです。

ところが、日本ではこの30年ほど、おかしなことが起きてきました。

年功序列・終身雇用の行き詰まりに伴う成果主義の強化です。

もちろんアメリカは基本的に成果主義ですが、その大前提として、仕事を自由に選ぶ権利があります。

ところが日本の場合は、相変わらず会社都合で職種転換や転勤が行われています。

にもかかわらず、成果主義を強化しているのです。

これは「不自由と自己責任」のシステムと言わざるを得ません。

パプアニューギニア海産の雇用制度には、自分で好きな仕事を選ぶ自由があります。

それどころか、いつ、どれだけ出勤するのかという自由さえ与えています。

そして給料は働いた分だけ払われます。

完全な自由と自己責任の仕組みなのです。

パプアニューギニア海産には、雇用制度を知ろうと多くの企業の視察が殺到したそうです。

そのため、私は同じような雇用の仕組みがどんどん広がってくれればよいなと考えています。

特に高齢層にとっては、こうした雇用制度が広がることは、大きな朗報だと言えるでしょう。

なぜかと言うと、高齢層は長年培ってきた高いスキルを持っています。

ただ、残念ながら、体力は確実に衰えていますので、若いときのような長時間労働ができませんし、体調不良で出勤できないことも多くなります。

ところが、パプアニューギニア海産のような雇用制度が広がって、好きなときに好きなだけ働けるようになれば、高齢者が活躍できる場が増えるのです。

 

森永卓郎(もりなが・たくろう)

1957年生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。東京大学卒業。日本専売公社、経済企画庁などを経て現職。50年間集めてきたコレクションを展示するB宝館が話題。近著に、『長生き地獄にならないための 老後のお金大全』(KADOKAWA)がある。

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『なぜ日本経済は後手に回るのか』

(森永 卓郎 森永 康平/KADOKAWA)

新型コロナウイルス感染症によって生じた日本経済の失速。その原因は長年続いている「官僚主義と東京中心主義」にあると、森永さんは分析します。では今後どうすれば感染拡大を抑え、経済的苦境を脱することができるのか――。豊富な統計やデータを基に導き出された、未来への提言が記された一冊です。

この記事は『毎日が発見』2022年11月号に掲載の情報です。

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