将来の不安を感じさせる「お金」の問題。そんなお金に人生を振り回されないためには、「知恵が必要」だと経済コラムニストの大江英樹さんはいいます。そこで、大手証券会社で長年にわたり個人の資産運用業務に携わってきた大江さんの著書『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごしかた』(すばる舎)から、将来の不安をなくせるお金に関する知恵と備えるべき年代別ポイントを連載形式でお届けします。
貯金代わりに保険に入るのは意味がない
世の中には「なかなか貯金ができないけれど、保険に入れば強制的に保険料が引かれるので自動的に貯まるから」といって貯金代わりに保険に入る人もいますが、これもあまり意味はありません。
サラリーマンであれば天引き貯蓄をすれば済むだけの話だからです。
さらに「今は低金利なので貯金をしても利息はほとんど付かないけれど、個人年金保険のようなものなら定期預金よりもずっと利息が高い」という人もいますが、今のような超低金利の時に期間が30年とか40年といった長い期間でお金を預けるのは避けたほうが良いでしょう。
もし中途解約の必要が出た場合、ほとんどの期間で元本を割ることになります。
それに、貯金と保険はそもそも正反対の性質を持つものです。
貯金=将来の楽しみに備えて自分で蓄えるもの
保険=将来の不幸に備えてみんなで備えるもの
いずれも将来に備える点は同じですが、それが「楽しみ」なのか「不幸」なのか、「自分一人で備えるもの」か「みんなで備えるものか」という違いですから、これはそもそも正反対のものだと考えるべきでしょう。
したがって、保険で貯金の役割を持たそうと思うと、利回りはたいしたことなく、保障もそれほど多くないという中途半端なものになってしまうのです。
保険の本質は「掛け捨て」です。
将来起こり得る不幸、そしてそれが一人のお金ではとても賄えない性質の不幸な出来事に対して、あらかじめみんなでお金を出し合っておき、誰かがそういう大きな不幸に遭った時に、みんなで出したお金をその人に回してあげるというのが保険の本質です。
今流行の言葉で言えば、貯金は「自助」そして保険は「共助」なのです。
必要な保険はできるだけ安い保険料で多くの保障が得られる「掛け捨て」で対応し、お金を貯めたり増やしたりするのは「貯蓄」や「投資」で考えるべきでしょう。
公益財団法人「生命保険文化センター」が平成30年12月に発表した「生命保険に関する全国実態調査」によれば、40歳〜59歳の人で毎年払っている保険料の金額は平均で42万7千円となっています。
もし仮に40歳からずっとこの金額を60歳まで払い続けたとすると、その金額は854万円です。
ところがネット生命保険で仮に生命保険の死亡保障を2000万円で同じ期間加入し続けた場合、シミュレーションによれば、払い込む保険料は131万円ぐらいで済みます。
なんと7倍近く違ってくるのです。
気を付けないとわれわれは実にムダな保険料をたくさん払っているのかもしれません。
前半3章でお金に対する考え方や知識を、後半3章で実際のお金をどう扱うかの具体的な年代別戦略モデルを資産運用のプロが徹底解説しています