「終活のように自分の死をコントロールするのは現代の病」医学博士・養老孟司さんが考える「死」の種類

『クチコミ付きで施設選びに失敗しない! 全国老人ホームガイド』 (みんなの介護 (監修)/KADOKAWA)第5回【全5回】

"老人ホーム探し"を考え始めても、置かれた状況や個人の希望は千差万別。「いつから何をすればいいのかわからない」「漠然と不安が募る...」という方も多いのではないでしょうか? そんな方に活用してもらいたいのが、10年以上にわたって老人ホーム探しをお手伝いをしてきた「みんなの介護」監修による『クチコミ付きで施設選びに失敗しない! 全国老人ホームガイド』。幸せな老後を迎えられるように、多種多様な施設選びの参考にしてください!

※本記事はみんなの介護 (監修)著の書籍『クチコミ付きで施設選びに失敗しない! 全国老人ホームガイド』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。


"終活"のように死をコントロールするのは現代の病

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医学博士ながら医療システム、現代社会の在り方にも時に批判的な目を向ける養老孟司さん。そんな養老さんが考える死とは?

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――ご自身の「老い」を自覚することはありますか?

養老孟司さん(以下、養老):僕が初めて「老い」に気付いたのは、60代になって会合に参加し、自分が一番年上だということに気付いた時です。「老い」というものは、自分でそう感じるのではなくて、人と比較したり、人に言われたりして気付くものだと思います。

――自分の「老い」はことさら大げさに考える必要はない?

養老:そうだと思いますよ。「介護」についても同じこと。考えても、キリがありません。大事なのは、介護が必要になった時、その状態を受け入れる気持ちが持てるかどうかということでしょ? だけどそれは、なってみないとわからない。なぜなら、「その状態になる前の自分と、なってからの自分は違う」から。

人間が老いるというのは自然現象で、だからこそ、なってみてその場で考えればいいんです。そんなこと言うと、「無責任だ」と言われるかも知れないけど、そうした自然現象に責任を持つのは、本当に難しいことだと思います。

――ご自分の死を考えることは?

養老:いやぁ、あんまり考えないですね。どうでもいいと思ってます。死を3つの種類に分けて考えるとわかりやすい。一人称の死、二人称の死、それから三人称の死です。自分の死というのは一人称の死です。死んだら意識がなくなるんだから、考えたって意味のないことなんですよ。なのに最近は、「終活」ブームなんて言って、生きているうちに自分の死をコントロールしようとする人が増えているでしょう。これは、「自分は何でもわかる」と思い込んでいる現代人の病だと思いますね。自分がいつ、どんなふうに死ぬかなんて、誰にも予測できません。

 

養老孟司
1937年、神奈川県生まれ。東京大学名誉教授。医学博士。『バカの壁』(新潮新書)などのベストセラーも持つ。

※本記事はみんなの介護 (監修)著の書籍『クチコミ付きで施設選びに失敗しない! 全国老人ホームガイド』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
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