アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。
皆さん「ママ友」はいらっしゃいますか? 私の長きにわたる人生の中の、色んなママたちのお話をしようと思います。
※登場人物はすべて仮名です
【前回】えっ、議事録から消された私の名前。PTA役員選挙で発覚した「姑息な裏工作」【PTAトラブル】
マンションの子ども会の会計を長年されていた方がご病気になり入院し、私が会計を引き継ぐことになった。
引継ぎをするには会計の帳簿と通帳を預からなくてはならない。
彼女の入院している病院に直接伺っていいのかわからなかったが、いつ行ってもご自宅には子どもだけしかおらず、手紙を渡しても無しのつぶて。
子ども会の会長に経緯を説明し、病院に直接行くことにした。
受付で本人に確認をしてもらい病室へ。
ドアをノックして入ると、そこにいたのは私の知っているふくよかな彼女ではなく、頬はこけ、目は落ちくぼんで半分近く痩せた彼女だった。
あまりにもの変わりように思わず立ちすくんでしまったが、彼女にそれを気遣わせないように咄嗟に何事も無かったかのように笑顔で出来るだけ明るく声をかけた。
「お体の具合が悪かったなんて知らなくて申し訳なかったです」
彼女とは子ども会繋がりと言うだけで、子どもの学年が離れていたから普段からの付き合いは無かった。
だから、彼女がいつから具合が悪かったのか知らなかったのだ。
いつの頃からか子ども会の集まりには出てこなくなり、イベントの際には会長から代わりに会計を頼まれることが増えて行ったが、私は単に「子どもが高学年になったら親は忙しくなるんだろうな」と思っていた。
彼女は子宮がんと乳がんだった。
「ちょっと具合がイマイチやなぁと思ってたんやけど、体力が落ちてきたんや思ってスイミング始めてガンガンにやってたら、わかった時には色々転移しとってね。会長には全部話したんやけど、聞いてなかったんや(笑)。驚いたやろ?」
出来るだけ明るく振舞ったつもりだったが、私の驚きは彼女には見抜かれていた。
「引継ぎやけど、私も急な入院やったから帳簿に書けてないレシートや領収書がたくさんあるんよ。それを缶に全部入れてるから、来週にでもまた来てくれる?」
明るく話す彼女の声は、元気なころとハリが無いだけであまり変わりはなかった。
けれども、少しの時間だったが見る見るうちに疲れが見えてきたので、来週に来る約束をして病室を出た。
病室を出てからの私は、頭の中で「えっ?彼女っていくつやったっけ?まだ30代?40になってへんよね?子どもって中学生と小学生の二人やんな?」と、改めて彼女が置かれている立場が重く感じた。
数日後の子ども会の集まりの際に、私が会計を引き継ぐことが会長から発表された。
「先日お見舞いに行きまして、しばらく治療に専念すると言う事でしたので、今週の〇曜日に病院に行って帳簿や通帳を預かって引継ぎをさせて頂く事になりました」と、皆さんにお伝えした。
病名に関してはご本人が公表していないので、私ももちろん会長もそれに関しては触れずに必要事項だけにとどめた。
すると一人だけ「私も一緒にお見舞いに行くわ!」と言いだした。
「いや、帳簿と通帳貰って引き継ぐだけやから私だけでいいよ」
そう断るも、「色々お世話になってたんやから一緒に行くわ!」と言ってきかない。
ほかの皆さんは何かを察したのだろう、「かづさんだけでいいやん!」と口々に言ってくれたが、「私も一緒に行くって!大丈夫やから!」と言ってきかない。
病院の面会時間が決まっているので時間をずらして先に行くと言う事も出来ず、仕方なくその方と一緒に行くことになった。
そして当日、病室を訪れた私の横にもう一人いたのを見て、彼女は少し驚いた表情だった。
「お世話になった」とは言うものの、今までそんなに言うほどの付き合いがあったのではないのだろう。
彼女の表情がそう語っていた。
一通り引き継ぎの説明を受け、通帳とまだ記載されていないレシートや領収書の束、そして小銭が入った財布を缶に入れて受け取った。
一緒にお見舞いに来た方は、ずっと無言で椅子に座っている。
何しに来たんだか...。
「お大事に」と彼女に手を振って病室を後にした。
病室から少し離れたところでまで来たら、その方は私の顔を見ながら早口で喋り出した。
「えらい瘦せとったな!あんなになるんやな!あれはきっと癌やで!どこの癌なんやろ?あんた聞いてんのとちゃうん?いやー!ほんまに痩せとった!本人やとすぐわからんかったもん!」
あぁ、やっぱり物珍しく、見に来たかったんだとわかった。
本人に直接言わなかったことだけが救いだった。
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