ペンネーム:フライパンの鉄
性別:男性
年齢:54歳
「男が料理できる」のは、それはそれで軋轢を生んだり、面倒が生まれたりするもの。世間でいうほど良いものではないことを知る自称ナイスミドル。
うちの妻はショッピングモールや家具生活雑貨の店にいくと必ずといっていいほど、食器コーナーを物色する。そこで、ちょくちょくフライパンを買い替えたいという話になるのだが、このやりとりが非常に面倒くさい。
「フライパン、そろそろ買い換えたいんだけどこんなのどう?」そう聞く妻が手にしているのは、いつも焦げつかない加工のフライパン。
意見を求められたなら、答えるしかない。私の回答はいつも「今のフライパンはどこがダメなの? もし新しく買うなら鉄のフライパンにしたら」というもの。「だって、最近焦げつくようになってきたから」というのが、それに対して毎度妻が挙げてくる理由である。
前回、私の意見を無視して買ったのも「焦げ付かないフライパン」で、使い込むほどに"焦げ付かない"から、"焦げ付きにくい"に変わり、いつしか"普通にコゲつく"フライパンになってしまったんじゃないか......。そんな心の声は飲み込んで、今回も鉄製のフライパンをすすめてみる。「鉄製のフライパンなら使い込むほどに焦げ付かなくなるよ」
そんなこちらの提案に、妻は反論する。「鉄のフライパンは、油をなじませるまでに苦労するから嫌」「重くて手首を痛めるから嫌」と。
以前、妻はブームに乗ってスキレットなる小型の鉄製フライパンを買っていた。ところが、油をなじませるどころかその前のさび止め落とし作業すらやらず、そのまま放置している。さも経験したかのように語るのはおかしい...なんて言いたい気持ちを抑えて「大丈夫、油慣らしは完璧にやってあげるから」と答える私。
それでも、妻はこまごまと反論してきた。次第に感情的になり、私が何を言っても脊髄反射で反論が飛んでくる。
「鉄のは重くて振るのも大変だし」と言われ、「最近は軽い鉄製のも出てきているんだよ」と返したが、聞く耳も持たない。結局のところ、新しいフライパンを買いたいという衝動に水を差されたのが気にくわなかったのか、プイっと不満げな顔で離れていってしまった。
実は、この「新しいフライパン欲しい〜だったら鉄のにすれば?〜怒ってプイ」は何度も何度も繰り返されている。
私だって、何も鉄に固執しているわけではない。焦げ付かないフライパンの耐久性が非常に高くなってきていることも知っているし、使い方によっては非常に便利な道具だとも思っている。
問題は、質問されたから提案したことに対して「あなたの支持する鉄のフライパンはここがダメ!」なんて調子で頭ごなしに否定してくることなのだ。だから、こちらも反論して、険悪な雰囲気になってしまう。
もし次に「新しいフライパンが欲しい」と言われたら、反論も提案もせずに「それでいいんじゃない」と「焦げつかないフライパン」を受け入れてみようか。自分を曲げるのは少し不本意ながら、夫婦生活も折り返し地点を過ぎた今、二人波風立てずに仲良くやっていく道を探るのもひとつなのではないかとも思っている。
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