<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:60
プロフィール:地方都市で公務員となり地元の女性と結婚しました。義父(85歳)が近頃弱気になってきました。
義父は農家一筋で生きてきた人で、若い頃は自ら重機を使って山を崩して畑を広げたり、自宅までの私道を自ら広げて舗装したりと、アクティブを絵に描いたような生活だったそうです。
しかし、70代後半ぐらいから認知症の傾向が出始め、3年前に免許返納してもらいました。
ところが、じっとしていることに慣れていない義父です。
大量の竹ぼうきを作ってみたり、壊れかけた物置をのこぎり一つで解体しようと目論んだり、とにかく精力的に活動を続けます。
免許返納したにも関わらず「運転はできる」と軽トラに乗ろうとして、同居の義弟(49歳)が慌てて止めたこともありました。
ところが、です。
「うーん、なんか痛い、足がなぁ...」
2年ほど前に義父は左足を怪我して杖をつくようになり、2022年の秋頃から急にその足を気にし始めました。
寒くなり始める時期だから周囲もあまり気にはしていなかったのですが、今までなら理由をつけて行かなかった病院に、自分から「行く」と言い出して、その後は一気に歩かなくなりました。
「お父さんもすっかりインドア派になっちゃったみたい。まあ、動き回らないのは安心だけどねえ...」
一時期は義父のお目付けも兼ねて毎日のように実家に通っていた妻(58歳)も、ここ最近は2〜3日おきの訪問に切り替えました。
そんな状態が1カ月ほど続いた頃のことです。
「この頃さあ、なんか、すっかり老け込んじゃった感じでね」
妻から義父に関する新たな悩みを打ち明けられました。
すっかり弱気になった義父が、やたらと「自分が死んだあとのことを言ってくる」というのです。
「まあ、年を取ってくれば誰だって、そういうことは...」
「俺はもう長くないから、って始まるんだけど、その中身がね...」
妻によると、その話は食い違いだらけとのこと。
例えば、すでに人に預けて委託している田んぼは、義弟がやっていることになっているようです。
「あいつに今まで通り続けてもらうようにして、とか言うし...」
「種籾の注文がどうとか言わなくなってたから(このことでもかつて事件がありました...)、ちゃんと分かってると思ってたけどなあ」
「それだけじゃないわ、山の杉は売って弟と分けろ、なんてさ」
「...山の杉? 初耳だね」
「そりゃそうよ、植えたのはいいけど、値崩れしたとか言って、もう何十年も前に放り出しちゃったんだから」
いろいろな記憶が混ざっていて、妻も理解するのが大変なようです。
「そのたびに、それはもう人に譲ったでしょ、とか、とっくにやめちゃったでしょ、とか納得させるのが一苦労よ」
認知症の影響でしょうか、こうしたやり取りを義父はすぐに忘れてしまうようです。
数日後には話は振り出しに戻り、最初からまた説明しているとのこと。
「まあ、認知症なんだから、そういうことも...」
「ウジさんにもそろそろ約束通り敷地内に家を建ててもらって、なんて言うから、もう家は建てたわよ、って何度言ったか。毎回、ああそうだった、って納得するくせに、なんでそのやりとりは忘れて、思い違いの記憶だけは忘れないのかしらねえ...」
いらついた妻の言葉には思わずうなずいてしまいました。
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