<この体験記を書いた人>
ペンネーム:夏子
性別:女性
年齢:46
プロフィール:同じ年の夫と私、子どもの3人で郊外の住宅街に住んでいる主婦です。毎日のんびり近所の公園を散歩して癒されています。
小学5年生の子どもがまだ幼稚園の年少さんだったときのことです。
私と子どもの2人で親戚の葬儀に参列することになりました。
斎場は電車を乗り継いで3時間ほどかかる場所にあります。
午前中に自宅を出て私の実家へ行き、荷物を置いて実家の家族と一緒に1時間ほどかけて斎場へ移動し、お通夜に参列。
その夜は実家に泊まり、翌日は告別式と火葬場へ行き、お昼過ぎくらいに現地解散して自宅へ帰るスケジュールでした。
子どもは自分で歩いて小さい荷物なら持てる年齢でしたが、移動時間はかなり長いです。
私は自分がすべての荷物を持つ覚悟をして、子どもの着替えと私の下着・化粧品だけを用意するなど、最小限に絞りました。
それでも意外と必要な物が多くて、結局大きなカバンがパンパンになるくらいの荷物になってしまいました。
一泊でお葬式に出るのは、まだ年少さんの子どもには体力的に厳しいスケジュールだったかもしれません。
火葬場からの帰り、ほとんど乗客がいない昼下がりの電車で暖かい日差しを浴びて気持ちよくなったらしく、子どもは熟睡してしまいました。
最寄り駅に近づいたので起こそうとしましたが、全く起きる様子がありません。
当時、子どもの体重は20kgほどだったと思います。
伸縮性がない喪服を着てパンプスを履いた状態で、大きなカバンを持って熟睡したグニャグニャの子どもを抱き上げるのは無理でした。
最寄り駅に到着し、とっさに開いたドアの先に人がいないのを確認してカバンを放り投げ、子どもを抱えて電車を降りました。
すると子どもが起き、驚くほど大声で泣きながら背中を反らせて暴れ始めました。
徒歩だと家まで20分ほどかかります。
この調子だと家まで歩けませんし、安全に抱っこして帰るのは難しいでしょう。
タクシーを利用しようと思ったのですが、最寄り駅のタクシー乗り場はなかなかタクシーが来ないことで有名です。
しかもその日は、私たちの前にすでに60代くらいの女性が一人で待っていました。
普段は大人しい子ですが、この日は眠すぎて我を忘れたのか地面にひっくり返って「眠いよ~」と泣き叫び始めました。
抱えて「静かに待とうね」とあやしましたが泣き止みません。
周囲に「すみません...」と謝りつつ30分ほどたった頃、やっと1台タクシーが来ました。
すると、先に待っていた女性が「お先にどうぞ」と譲ってくれたのです。
私より先にいたのだから、女性は30分以上待っていたと思います。
「私も子育てしているときにいろんな人に助けてもらったから気にしないで」
「お子さん眠いんでしょ? もう限界よ。あなた、遠慮しないではやくお家で寝かせてあげて」
女性は優しい口調でそう言ってくれて、荷物をタクシーに乗せるのも手伝ってくれました。
途方に暮れていたので、心の底からありがたかったです。
小さかった子どもも成長し、もう小学5年です。
私も次の子育て世代の方が困っている場面に出会ったら、あのときの女性のように親切にすることで恩返ししたいと思っています。
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