<この体験記を書いた人>
ペンネーム:とらとら
性別:女性
年齢:54
プロフィール:アラフィフ兼業主婦。公共交通機関ではわりと席を譲るタイプです。
今年54歳の兼業主婦です。
今から5年ほど前の夏の出来事です。
いつもは通勤に車を使っていましたが、ちょうど車検だったため珍しくバスを利用しました。
私の家の周りは住宅街で、朝の通勤時間のバスは結構混み合います。
その日もバスの中はかなり混んでいて、私は入り口付近で吊り輪につかまり立ったまま乗車していました。
すると、とあるバス停で抱っこ紐で赤ちゃんを抱いた女性(20代くらい)が乗車してきました。
その女性はすでに汗だくで、大きな荷物を「よいしょっ」と言いながら足元に置き、額に浮かぶ玉のような汗を手で拭っていました。
そして、もにゃもにゃと言葉になっていないような声で何か言っている赤ちゃんに対して「しぃ~」と指を唇に当てて言いながら、まわりにいた私たちにも「静かにさせますので、すみません」と小さく頭を何度も下げながら言っていました。
赤ちゃんは泣いているわけではないので、最初からかなり遠慮しているようでした。
そして、女性はきょろきょろと辺りを見回して、自分の斜め前に伸びていた取っ手が一番近いと判断したのか、ぎこちない様子で手を伸ばします。
その様子から、私はなんとなく「この女性もこの時間のバスに乗り慣れてないのかな」と感じました。
荷物も多かったので、どこか座れそうなところがないか私も見回しましたが、やはり空きはありません。
しかもみんな下を向いて携帯を見たり、目をつむって音楽を聞いたりしていたので、女性の存在に気づいていない人のほうが多いようでした。
私が「せめて優先席付近で誰か変わってあげられそうな人はいないかな?」と思っていると、私の目の前に座っていた中学生の男の子が、おどおどしながら自分の荷物を抱えて立ち上がりました。
そして、取っ手を掴むために斜め後ろを向いていた女性の肩をもじもじしながらたたきました。
男の子は女性が振り返ると、「せっ、席どうぞっ!」と言ったのです。
顔は真っ赤で、きっとバスなどで席を譲るのが初めてだったのでしょう。
女性がお礼を言いながら男の子が座っていた席に座ると、その子が「一仕事終えた」と言わんばかりに胸をなでおろしているのがかわいくて、にやにやしてしまいました。
慣れない朝の通勤ラッシュで少しげんなりしていましたが、その日はほっこりとした気分になり、仕事もはかどりました。
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