<この体験記を書いた人>
ペンネーム:りゅうこ
性別:女性
年齢:40
プロフィール:先日、誕生日を迎えました。充実した40代を送りたい!
2012年のお盆の話です。
家族で集まって食事をしているときに、祖父(76歳)が倒れました。
すぐに救急車を呼んだのですが、搬送先で告げられた病名は「大動脈瘤乖離」。
先生からは「緊急手術をしないと助からない」と言われてしまいました。
先ほどまで元気だった祖父がいきなり生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされたことに驚きながらも、私たちは藁にもすがる思いで「今すぐ手術をしてくれ」と先生に懇願しました。
しかしそのとき、祖母(76歳)が叫んだのです。
「手術はやめてくれ!」
「そのまま死なせてやったほうが本人のためだ!」
祖母はパニック状態で私たちも困惑しましたが、祖母が医師にすがりつきながら言った言葉にショックを受けました。
「夫は長年、糖尿病に苦しめられていました、もう死なせてあげてください!」
確かに祖父は糖尿病を患い、インスリンの注射も打っていました。
しかし、合併症もなく元気でした。
先ほどまで私たちと食事を楽しんでいたくらいです。
私たちは祖母の言動に驚きながらも、祖母を諭したのですが...。
「あの人の介護なんてしたくない。だからここで死なせて欲しい!」
泣きながら言った祖母の本音でした。
それを聞いて、私は本当に悲しくなってしまいました。
長年連れ添った夫が死のうとしているときに、真っ先に心配するのが介護の負担のことだなんて...。
しかし、祖母の同意を得られない限り手術はできません。
私たちは「介護が必要になってもおばあちゃんに負担はかけない」「行政の力を借りられるから大丈夫」と祖母の説得に努めました。
その甲斐あって、祖母は渋々といった感じで「じゃあ、手術をしてくれ」と折れてくれたのですが、結局、祖父は助かりませんでした。
術後の感染症が原因で一度も目を覚ますことなく、逝ってしまったのです。
その後、祖母は先生にお礼を言い、葬式では喪主を務め、静かに涙を流しながら祖父を見送りました。
落ち着いた様子で、傍から見れば、哀しみに暮れながらも気丈に振舞う妻に見えたことでしょう。
しかし、私には祖母が亡き祖父へ向ける言葉の全てが白々しいものに思えてなりませんでした。
もちろん、祖母が祖父を愛していなかったとは言いません。
それでも、生死の境にいる祖父に「死んで欲しい」と言った祖母の姿が脳裏に焼き付いて離れないのです。
この一件から、私はいろいろと将来のことを考えるようになりました。
夫婦仲のこと、年を重ねること、老いること。
私はまだ40歳、人生の酸いも甘いも知っている年齢ではありません。
ここから40年も生きれば、介護の負担を恐れて夫に「死んで欲しい」なんてことを思う日がやってくるのかもしれません。
あの日の祖母の気持ちが分かるようになってしまうのかもしれません。
しかし、やはり私は先生に「夫を助けて欲しい」とすがれる妻でありたい。
そのためにも、夫との日々を大切に積み上げていきたいと思っています。
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