<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ころちゃん
性別:男性
年齢:55
プロフィール:コロナ禍の影響を受けてるのか、受けてないのか。非正規ながら毎日こつこつ働いている現在です。
現在55歳の私は大学入学の際に実家を離れ、それ以来ずっと一人暮らしを続けています。
父親は数年前81歳で他界し、私が結婚せず家庭を持たなかったせいもあり、父と同い年の母親は今でも実家で独居生活を送っています。
私は、コロナ禍になる前は、一応盆と正月には帰省していましたが、年老いた親に孫を見せるわけでもなく、収入の良い仕事をするでもなく...。
子としての義務を果たしていないようで、何となく引け目を感じることもありました。
同学年に当たる、例えば元プロ野球選手の桑田・清原といった有名人の活躍を見ると、自分と比べて落ち込むこともあります。
また、地元で同級生の誰彼の子どもが、優秀な学校に進学しただの、一流企業に務めているなど聞くと、親に肩身の狭い思いをさせているようで、心が痛むこともありました。
帰省しても旧友と会う機会も年々減ってきましたが、定期的に連絡して話ができる中学以来の同級生も1人いることはいます。
2年前に帰省したとき、彼とこんな話しをしました。
私たちの付き合いは長いですが、やはり年齢を重ねると話の話題は親のことが多くなってきます。
その日も、お互い亡くなった父親の話から、幸いにも健在である母親の様子などへと話が進みました。
ちなみに彼は公務員として働く傍ら立派な家庭も築いており、なんとなく劣等感を抱いていた私は、同じような調子で話すことに気後れする気持ちもありました。
そういったこともあり、私は自分の母親に関してついつい悲観的になってしまうのです。
「養ってやれず申し訳ない」
「なんでも自分でしなきゃいけなくてかわいそう」
そんな会話の中、彼がちょっと眉をひそめて言いました。
「ところでお前さ、お袋さんのことでさっきから、かわいそう、かわいそうって、なんだよ」
「いや、もう85歳になるのにな、あんなふうに一人で生活させててさ、ちょっとかわいそうで申し訳ないって思ったりするんだよ」
「でもお前、ほとんど毎日電話してんだろ?」
「まあ、電話はしてるけど、それくらいしかできないし」
「そしたらさ、お袋さんは忘れられてるわけじゃないだろう」
「まあ、そうだけど」
「お前な、お前のお袋さんは立派な人だよ。85歳になっても自分の脚で歩いて、自分の食事も作って、掃除、洗濯も自分でできる。それがかわいそうか? 堂々と胸を張って誇れることじゃないのか?」
「それをお前がかわいそう、かわいそうって、まるで哀れな人みたいに扱って。それが一番かわいそうだぞ。俺のお袋はすごいぞって自慢するぐらいでなきゃ」
彼は笑顔でそう言ってくれましたが、私にはその言葉が深く突き刺さりました。
知らぬ間に卑屈でネガティブな考え方に囚われていた自分に気付きました。
こちらがそんな思いで接していたら、特に大きな持病もなく普通に暮らしている母も、それ以上に元気が出るはずはありません。
もっと前向きな言動を見せるべきだったと、大きく考え方を改めました。
私はもちろん今でも母に頻繁に電話をしますが、このとき以来、「ごめんな」が減り「がんばろうな」が増えた気がします。
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