<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:免許を返納することはもう車を運転しないこと。自明のことと思っていた理屈が義父(84歳)には通りません。
義父(84歳)はバリバリの農家で、田んぼの仕事にずっと携わってきました。
トラクターやミニ重機など、農作業に必要なものはほとんど使いこなし、軽トラでどこへでも出かけていく人でした。
しかし、2020年に義母が亡くなり、認知症の症状が目立つようになって、免許を返納してからはすっかり大人しくなりました。
...ならいいのですが、実はいまだに軽トラを運転しようとすることがあります。
すでに田んぼは人に委託しているのですが、「ちょっと田んぼを見てくっから」と出かけようとするのです。
「何言ってんだよ。田んぼはもう人に任せてるだろ?」
「...え? あ、ああ...そうだった、っけか?」
「それに免許も返しちまっただろ? 運転なんてできねえよ」
「免許は返しても運転は忘れねえよ。慣れた道ばかりなんだから...」
同居する義弟(48歳)と義父のこんなやりとりは日常茶飯事です。
義弟は不在中に運転されては大変、と軽トラの鍵を持ち歩いていました。
ある日、義弟が帰宅すると、家の中がひどく荒らされていたそうです。
「空き巣か!」
家の中に義父の姿はなく、近くの畑に出ている間にやられたと思い、警察を呼びました。
しかし、義父が帰ってきて...。
「何だって? 軽トラの鍵を探した?」
「家中探しても見つからねえからさ、どこかに落としたんじゃねえかと思って...」
犯人は義父で、鍵を探して家の中をひっくり返していたのでした。
駆けつけた警察には平謝りして、散々な目に遭ったとのことでした。
いっそ軽トラを売ってしまおうかと考えたようですが、軽トラは義父の名義で買ったものなので、本人の了解なしには処分できません。
「いや、だからさ、免許はもうないわけでしょ?」
「そうだ、返納したんだからな」
「だったら、軽トラはなくてもいいでしょうが!」
「...いや、でも、ないと不便じゃねえか?」
この不思議な理屈を振りかざし、話が先に進みません。
また家を荒らされてはたまらないので、鍵は義父に持たせることにしました。
その代わりに軽トラからバッテリーを外して動かせなくしたので、これで無免許運転の危険は避けられるわけです。
それからしばらくして、義弟が帰宅すると、義父の姿がありません。
近くの畑にでもいるのかと思っていましたが、暗くなっても帰って来なかったそうです。
「まさか...」
そう思ってあちこち探した末に、軽トラを停めている裏庭に行くと、軽トラのボンネットの中に上半身を突っ込んでいる義父の姿を発見しました。
あわてて様子を見に行くと、義父はいびきをかいて寝入っていたそうです。
「いやあ、なんぼエンジンかけようとしてもかかんねえから、故障かと思ってな...」
昔取った杵柄とばかりに、エンジンルームを覗き込んでいるうちに寝てしまったらしいとのことでした。
「免許がないことは分かってるんだよね」
「ああ、でも、運転はできるって聞かねんだから...」
「軽トラ、うちで預かるか?」
「それならそれで、軽トラを探し回っかもしんねえしなあ...」
妻(57歳)や義弟と、どうやって義父を説得するか、問題解決の妙手を考えあぐねるままに過ごしています。
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