<この体験記を書いた人>
ペンネーム:濃姫
性別:女
年齢:44
プロフィール:18歳の娘と13歳の息子の母親。夫(47歳)の実家で義父( 73歳)と義母(69歳)と半同居。
2018年1月、最愛の父(享年73歳)が他界しました。
父と母(75歳)はとても仲が良く、母は父からとても大切にされ、常に守られていました。
そのせいか、父が他界してしまうと、母は一日中父の位牌の前に座り、何もせず過ごすようになってしまいました。
本来の母は習い事や仲良しのお友だちと観劇や旅行に行くなど、毎日外出するような生活をしていたアクティブな人でした。
最初は私も兄(50歳)も時間がたてば、いつもの母に戻るだろうと楽観的に思っていたのです。
しかし、3カ月が過ぎても、母はほとんど外に出ることはありません。
心配した兄が、母の好きな歌舞伎や観劇のチケットを購入したり、私も母の好きな手芸や踊りなどの習い事を勧めたりしました。
すると、母も少しずつ外に出かけるようになってきていたので安心していましたが、2020年にコロナウイルスが蔓延し、緊急事態宣言が発令され、事態が急変しました。
劇場も休場、習い事の教室もお休みとなり、母は外へ出ることができなくなってしまったのです。
私も兄も母が心配で、週に一度、顔を見に実家を訪れるようにしていましたが、再び母は一人で過ごす時間が多くなってしまいました。
最初に母の異変に気付いたのは兄です。
「今日、母さんの様子を見に夕方家に寄ったら、母さんが夕飯の支度をしていたんだけど、父さんの分まで作っていたんだよね。しかも、ご飯やみそ汁まで、父さんの席に並べて置いてあるんだよ」
「俺が『何で父さんの分まで用意しているの? 』って笑いながら声をかけたら、しばらくボォっとしちゃってさぁ。少ししたら、父さんが亡くなったことを思い出して、慌てて間違えて2人分作っちゃった~って言っていたけど」
兄からそんな話を聞いて、私は驚いて母に電話をしました。
電話口では母はいつもと変わりなかったので、週末に娘(18歳)と息子(13歳)と一緒に行くと告げると喜んで、2人の好きなチーズケーキを焼いて待っていると言いました。
週末、母に会いに行くと子どもたちの好きなチーズケーキを焼いて待ってくれていたのですが、私が紅茶を淹れようとすると、父がいつもいた場所に向かって「お父さんも紅茶でいい? コーヒーがいい?」と言うのです。
さらに話をしていると、たびたび父が生きているような言動をすることも気になりました。
その都度「もう、お父さん死んじゃったからいないでしょ」とやんわり否定すると、一瞬ポカンとした顔をして「あ、そうだったわね」と寂しそうな表情を浮かべます。
私は、このまま母を一人にしておかない方がいいような気がして、兄に相談したのですが、兄も私もすぐに母と一緒に暮らすことは難しいのです。
当面は時間を作って母に会いにいくようにしていますが、今後のことを考えると不安が尽きません。
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