<この体験記を書いた人>
ペンネーム:みけ
性別:女
年齢:52
プロフィール:両親と同じ敷地内に住んでいる52歳の自営業。
6年前、私はがんが見つかり手術をすることになりました。
その手術のための入院前夜、いつもの同級生と飲み会がありました。
飲み会の会場になる食堂も同級生夫婦の経営です。
手術のことは食堂夫婦の2人にしか話していませんでした。
翌日、入院手続きを終えて病室に入ると、携帯に食堂夫婦のAちゃん(女性)から着信があったことに気が付きました。
個室だったので良かったと思いながら急いでかけ直すと、夕べ一緒に飲んでいた一人(B君)が飲酒運転で事故を起こして留置場に入ったとのことです。
それを聞いて、言われてみれば夕べ、皆で帰るときにB君がいつの間にかいなくなっていたことを思い出しました。
どうやらB君は誰にも何も言わずに運転して帰宅しようとお店を出て、脇道から突っ込んできた車とぶつかってしまったようです。
何も知らなかった私たち。
夜が明けて、B君の奥さんからの「お店に泊めてもらったのかな?」という電話に慌てて、捜索を始めたそうです。
お店からB君の家までは簡単な道順で、何度たどっても付近にB君の車がなく、なかなか見つかりません。
奥さんと相談し、警察に届を出してようやく留置場にいると分かりました。
B君と事故の相手に大きな怪我はなかったと聞いて少しホッとしましたが、心配なのはお店とAちゃんのことです。
飲酒事故があった場合、お酒を提供した側も罪に問われるので、その辺りが心配でした。
でも、私の関心はAちゃんの責任感です。
Aちゃんは私たちと一緒にお酒を飲みますが、お店の人間としての責任は忘れず、代行の手配はもちろん、いつも全員を代行や家族のお迎えの車まで送って行きます。
そんなAちゃんだから、B君が帰ってしまったのを気付けなかったと強く後悔し、自分を責めているだろうと思いました。
病院なので電話は必要なことだけ話して切りましたが、その夜、少しでも気が紛れればといろいろとLINEで会話をしました。
それから2年後。
2回の手術とうつでの入院から立ち直って、再び飲み会に参加できるようになった私。
ちょっと懐かしく思いながら飲んでいたら、C君(Aちゃんの夫)が「あのときはありがとう」と、改まった調子で言われました。
「俺だったら、明日がんの手術するって日に人のこと気にしてられないわ。怖くってさぁ、自分の不安だけで精一杯だよ。それなのにな、Aちゃんの心配して助けてくれるってさ。お前、実はスゴイんだな」
C君はそう言って笑いました。
子どもの頃から私をイジってばかりだったC君からの思いがけない言葉。
素直に、私だって実は怖かった、とは言えず。
病後の無力感で一杯だった心が緩んで泣き笑いしてしまいました。
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