娘からの「かけていないはずの電話」。気になり予定を変更したが、そのまま進んでいたら...

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:60
プロフィール:役場の広報課に勤める地方公務員です。恐ろしい災害時には、役目上多少危険な場所にも取材に行かなければなりません。

娘からの「かけていないはずの電話」。気になり予定を変更したが、そのまま進んでいたら... 10.jpg

2019年10月、日本を襲った台風19号は各地に大きな爪痕を残しました。

私の住む町もあちこちで川が増水したり、地すべりが起きたりして大変でしたが、幸い、人命に関わるような大きな被害はありませんでした。

「少し良くなってきたかな? でもまだ川は濁流だなあ」

私は地震後のある日、普段は美しい渓流沿いの道を車で走っていました。

谷筋を進んだ山間の集落に出向き、大雨の状況や地区の様子などを取材するためです。

右側は崖、左は川という狭隘な道に入った所で突然、携帯が鳴りました。

「お、誰からだ?」

車を路側に止め、電話を取り出したところですぐに切れてしまいました。

画面には娘(当時24歳)の名前が表示されていました。

「なんだ? 家にいるはずなのに携帯からかけてくるなんて...」

そう思いながらかけ直してみましたが、呼び出し音が鳴りません。

改めて画面を見ると「圏外」の文字が。

「ここじゃあ電波が良くないよなあ...」

周りを囲まれた谷間の道では、かかったりかからなかったりはよくあることです。

しばし逡巡しました。

仕事なんだからこのまま行くか? でも、携帯からかかってきたってことは家電が使えない状態ってこと? 家で何かあったのか?

小康状態とは言え、台風のさなかの電話です。

心配が募ります。

「...とりあえず電波が入る街中までいったん戻ろう」

行く先の集落は緊急事態に陥っているというわけではなく、後に台風記事を書くための取材です。

今すぐ行かなければならないわけではないので、プライベートを優先させてもらうことにしました。

町場に戻って、娘の携帯に電話をかけ直しました。

「はい、お父さん、どうしたの? 珍しいね。家にいるのに携帯にかけてくるなんて...」

のんきな娘の声が聞こえてきてホッとすると同時に、「心配かけて!」と少々語気が荒くなってしまいました。

「何言ってんだ! お前が携帯からかけてきたから心配したんだろうが」

「え? 電話なんかしてないけど...」

狐につままれたような気分です。

妙だなと思い、なんだか気合が抜けてしまったのでいったん役場に戻ることにしました。

「ただいま戻りました...」

そう言いながら、災害対応にあたっている役場のホールに入っていくと、なんだか騒然としています。

「おお、ウジさん、無事だったか!」

災害対応にあたっていた副町長が、私に気づくと驚いたように声を上げました。

「は? どうしたんですか?」

「いや、君が向かっていた集落に通じる道、今さっき土砂崩れでふさがってしまったんだよ」

「はあ? 今ですか?」

「何だ、君。それを見て戻ってきたわけじゃないのか? タイミング的に巻き込まれたんじゃないかって、みんなで心配しとったんだよ」

時間や詳しい場所を聞くと、なんと、あのまま進んでいたらドンピシャリで巻き込まれるところでした。

娘からの電話がなければ、今頃は土砂の下に埋もれて、この世にはいなかったかもしれません。

命拾いの電話について帰宅してから話をしましたが、当の娘は「そんな電話、かけてないよ」の一点張りです。

たしかに娘の携帯の発信記録に、その時間の通話は残っていませんでした。

私の携帯の方も不思議なことに着信記録が残っていません。

「ほらー、なんか勘違いしたんじゃないの? 何にせよ無事で何より!」

娘にぽんと肩を叩かれてこの件は終わりとなりました。

それにしても、私の命を救ったあの電話は、一体どこからかかってきたのか、今も謎のままです。

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