君が生きていたら、僕の人生は変わっていたかな。事故で突然亡くなった友人を思い出すたびに考えること

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:栄一
性別:男
年齢:54
プロフィール:会社員です。出身は関東ですが大学が中部地方で、そのまま就職しました。上下水道施設の維持管理をしています。

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友人のTには恩があります。

大学卒業後、仕事がうまくいかず、実家でくすぶっていた私にアルバイトを紹介してくれて、それがきっかけで今の仕事に就くことができたのです。

Tとは大学に入って、すぐに親しく話をするようになりました。

工学部の同じ学科で出身地も同じ、2人ともオーケストラに入っていました。

Tはビオラ、私はクラリネットでした。

もっとも、Tは練習にはあまり熱は入らず、女の子との出会いの場と考えていたようです。

入部して間もなく、Tは同じ学年のオーボエのYさんと付き合い始めました。

Yさんは教育学部で世話女房型、みんなから「女将」という愛称で呼ばれ、頼りにされていました。

大学卒業後、私は就職して関西へ配属され、Tは就職はせず、在学時からやっていた税理士事務所でのアルバイトを続けながら、税理士の資格を取るための勉強をしていました。

そのうちTは高校のときに付き合っていたAさんとの関係が元に戻り、実家に帰ったときにはAさんと付き合っていたようです。

その時期も、Tとはよく呑んでいました。

学生時代からなじんでいた焼き鳥屋で月に1回くらい落ち合って、18時過ぎから閉店時間まで、焼き鳥で日本酒を2人で一升くらい呑む、というのが習慣になっていました。

話題は、仕事のこと、同期の仲間のこと、女の子のことなどでした。

酔うと、二股をかけているTに「いい加減、どちらかに決めて、結婚したら」と私が意見するというのがパターンになっていました。

私は30歳で結婚し、すでに子どももいました。

周りへの目配りも効いて、親身になって関わるTの姿には尊敬する気持ちがありましたが、優柔不断なところが弱点となって人生につまずいている、という印象でした。

友人としてなんとかしてあげたいと思っていました。

Tは、Yさんにも未練があって、踏ん切りがつかないで苦しんでいるようでした。

そんな状態が続いたあと、Aさんが妊娠した、ということが分かりました。

Aさんは出産し、それでもTは、はっきりしない態度を続けていました。

入籍はしたのですが、子どもには「おじさん」と呼ばせていると言っていました。

実家にはあまり帰らず、Yさんとの付き合いも続けていました。

ところが平成13年の9月に、大学の同級生から電話があって、Tが死んだと聞きました。

北陸地方で、バイクの事故で即死だった、とのことでした。

すぐにYさんに電話をして、Tの死を知らせました。

唯一といっていい友人の死は私にとって大きなできごとでした。

ついこの間まで元気にしていたTが突然いなくなり、心に大きな穴が開いたような気持でした。

葬儀にはYさんと一緒に赴きました。

Yさんはショックを受けていて、黙りがちでした。

葬儀で、亡くなったTの顔を見る機会があったのですが、Yさんはかたくなに拒みました。

初七日の席へも誘われたのですが、断って、2人で帰路につきました。

帰りには、Yさんはもとの気丈な性格に戻り、会話も普通にできるようになっていました。

家まで送ろうか、と言いましたが、大丈夫、と言って一人で帰りました。

それから20年がたちます。

Yさんは、Tの死の一年後に見合い結婚しました。

Aさんとの子どもがどうなったかは分かりません。

学生時代の仲間に会うたびに、Tが生きていたら、という話になります。

34歳で逝ったT。

生きていてくれたら、その後の私の人生も変わったものになっていたかもしれません。

仲の良かった友人を失い、欠落感を抱えて、その後の生活を送っています。

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