<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:59
プロフィール:17年飼った犬が亡くなりました。死ぬ直前まで元気だったのにはちょっとしたわけがありました。
我が家の愛犬ユキは、17歳になる老犬です。
2020年の暮れ、かなり様子がおかしくなりました。
「おいユキ、どうした? ほれ、散歩だぞ」
いつもは散歩用のリードを見るだけで小屋から飛び出してくるのに、面倒くさそうに見やっただけで動こうとしません。
「あら、餌が残ってる」
妻(57歳)が、朝の餌をやろうとして、前夜の食べ残しに気づきました。
「なんだ? 残食なしの健康優良児が取り柄なのに」
当のユキは小屋の中でふて寝状態です。
「もう17歳だからね。調子も悪くなるかもね」
ユキは17年前の12月に生まれたての子犬のときにもらってきたのです。
寄る年波には勝てないってことか、と思っていた2021年の正月、息子(24歳)が帰省してくると俄然元気を取り戻しました。
「何だよユキ、元気ないって聞いてたから心配してたんだぜ」
息子もホッとした様子でした。
息子の膝もとにすり寄ってなにか催促する仕草です。
「分かってるよ、これだろ」
息子がリードを見せると、嬉しそうに吠えて意気揚々と散歩にでかけました。
「なんだい、ユキのやつ」
「さすがは兄弟よね。ユキも嬉しいんじゃないの?」
ユキがもらわれてきた2004年12月、最も喜んで世話をしたのは当時小学生だった息子でした。
「妹ができた」と、四六時中ユキのことをかまっていて、散歩につれていくのも、餌をやるのも、ノミ取りをするのも息子でした。
ユキも息子にはよく懐いていて、他の家族が散歩に連れて行こうとすると、嫌そうについてくる有様。
息子が大学に入って家を離れた6年前まで、犬の世話はもっぱら息子の役割だったのです。
「はるたか(息子)がいれば少しは元気になるかもな」
なんて妻と話していましたが、そのとおりだったわけです。
息子が職場に戻るまでの3日間、ユキは元気いっぱいに過ごしていました。
三が日が終わり、息子が車に荷物を積み込んでいるのを不安そうに見つめていたユキ。
いよいよ出発するとき、ユキは息子の膝に体を擦り寄せ、息子も名残惜しそうにユキの頭をなでていました。
息子の車がすっかり見えなくなっても、ユキはその行方を見つめて座っていたのです。
その次の日の朝は雪でした。
「うわあ、寒いと思ったら...」
そう言いながらユキの小屋の方を見ると、小屋の中にユキの姿がありません。
「え? まさか鎖が外れたとか...」
そういぶかしみながら、雪の中に踏み出すと、雪がうず高くなっているところを見つけました。
「まさか」と思いながら雪を払うと、そこには冷たくなったユキの姿が...。
あわてて妻を呼び、すっかり固くなったユキの体を毛布に包んで玄関に横たえました。
「あんなに元気にしていたのに...」
妻は信じられないという面持ちでユキの体をなでていました。
ユキは、大好きな息子に弱った姿を見せたくなかったのかもしれません。
最後の力を振り絞っての空元気だったのかと思うと、涙がこぼれました。
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