<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:59
プロフィール:コロナの猛威はとどまることを知りませんが、慣れというのは恐ろしいもので、いろいろと例年並みに戻りつつあります。
「去年はなかった議会報告会、今年はやるんですか?」
広報課の参与(62歳、退職後に再任用された先輩です)の思わぬ指示に、我ながら素っ頓狂な声で聞き返してしまいました。
議会報告会は例年、春と秋に行われるイベントですが、2020年はコロナの影響で中止されました。
町会議員が手分けをして町内の各地区で報告会を開き、質問や要望を聞くというのが建前です。
「議会事務局がうるさくてね。ほら、今年は町会議員の選挙も近いから...」
議会報告会は実際には議員の業績自慢の場。
「手分けをして」というのは要するに自分の地盤の地区に出向き、いかに自分が地区に貢献したかを「報告」するというわけです。
「各地区の集会所は貸し出し禁止じゃないんですか?」
「そこはそれ、何ごとにも例外は、ってやつだよ」
議員の圧力があったか、議会事務局の忖度か、いずれかは分かりかねますが勝手な話です。
「とにかく決まったんだから、広報誌に開催のお知らせを頼むよ」
「はあ、あまり人が集まらないほうがいいんじゃないですかねえ? 広報に載せるとなると不特定多数が集まるかもしれませんよ」
私は町の広報課でイベントのお知らせ記事も担当しています。
我が意に反しての記事を書くのは嬉しくはありません。
コロナ禍の中でイベントのお知らせ記事も、最近はすっかり「残念ながら」で書き出すものばかり。
秋のミュージックフェスティバルは早々に中止となり、ギリギリまで悩んでいた中学校の体育祭も一般向けの公開はなしとなりました。
町のお年寄りが楽しみにしている敬老会への保育園児の参加も、2年連続での見合わせです。
今年は他にも別枠がありました。
オリンピックがらみのイベントです。
我が県でもパブリックビューイングの計画がありましたが、ご時世でお流れとなりました。
そんな中で「応援イベント開催」のメモが私のところに回ってきたのです。
「うちの町出身の選手なんかいましたっけ?」
「いや町じゃないが県出身の選手の出場試合を応援するイベントを開くことになったんだよ」
「は? 県でも止めたビューイングを町でやるんですか?」
「それそれ。その中止に関する文書の中で、各自治体で工夫して応援を、っていうくだりがあったのを町長が気にしちゃって」
県としておおっぴらにはできないが、近場でこじんまりとならやれるんじゃないか、という忖度のようです。
内心忸怩たるものはありましたが、命じられれば記事にしないわけにはいきません。
結局役場のホールを会場にした応援イベントには、数えるほどの町民しか集まりませんでした。
町民のほうがよほど賢明ということでしょう。
自粛一色の中にあっても、政治やオリンピックだけが特別扱いなのは地方の田舎町でも同じというわけです。
特別扱いの「イベント開催」の記事を書くたびに、得も言われぬ怒りを禁じ得ませんでした。
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