「おじいちゃんには内緒だよ」娘の気遣いに感動... 祖母を思って実行してくれた「コロナ禍の墓参り」

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:59
プロフィール:母(享年89)がなくなって初めてのお盆ですが、非常事態宣言が出されたために墓参りができませんでした。

「おじいちゃんには内緒だよ」娘の気遣いに感動... 祖母を思って実行してくれた「コロナ禍の墓参り」 pixta_82151489_S.jpg

「うん、まあしょうがないね。来年に延期ってとこか...」

兄(62歳)から電話が来て、母の初盆の法事は見送るとの連絡を受けました。

私の実家は関東圏にあり、非常事態宣言の真っ只中となってしまったからです。

「まあ墓の手入れぐらいはこっちでしておくよ。親父は相変わらず慎重でね」

父(90歳)は、2回のワクチン接種を終えてはいるのですが、ブレークスルー感染などというのが出てきて、いままで以上に慎重になっているとのことでした。

実家を出ている私と折り合いが良くないこともありますが、私を含め、他人が訪問することにはとても神経質です。

母が亡くなったのは2021年の6月でした。

その頃も母の最期を看取るのはなかなか大変だったぐらい、コロナで大騒ぎしていました。

葬儀にあたっても父は家族以外を呼ぶことには否定的で「血族のみでやりたい」と言って、兄と私以外の参列を認めませんでした。

母の臨終の際は、私の妻(57歳)も同行していたのですが、父の思いを受けてあえて先に帰ってくれていました。

娘(26歳)は関東圏の中学校に勤めていますので割と近かったのですが、事情を話して来るのは遠慮してもらいました。

「おばあちゃんには悪いけど、おじいちゃんがそう言うんじゃしょうがないね」

そう言って納得してくれました。

「初盆だっていうのに、何もしてあげられないとはなあ...」

妻の実家の墓参りをしながら、なんとも言えない情けなさを感じていたお盆明けの頃です。

突然、娘からLINEが届きました。

「なんだ? 用事があるなら電話すりゃいいのに...」

そう思いながらスマホを見ると、「おばあちゃんの墓参りに行ってきたよ。やっとお別れできた感じ」とメッセージがあり、画像が添えられていました。

そこには母の真新しい墓石に花が飾られ、線香が上げられているのが写っていました。

「どういうことだ?」

事情を確かめようと電話をかけました。

「お墓に行ったことないのによく分かったな?」

「現代っ子ですからね。墓苑の名前だけは知ってたからネットで検索して行ったよ。電車で1時間ちょっと?」

「お墓は?」

「墓石を見て回ったから。そんなにある名字じゃないし、新しいからすぐ分かった」

「じいちゃんに聞いてもよかったのに...」

「そしたら来なくていいって言われると思ったからさ。お父さんもどうせ墓参りできてないと思ったし...おじいちゃんには内緒だよ」

気遣いのできる娘に感謝の気持ちでいっぱいでした。

「お墓、すごくきれいになってて、お花も新しかったから、私の持っていったのは混ぜて生けといた。だから、写真のお墓がきれいなのは私の手柄じゃございません」

電話の向こうでおどける娘に、思わず目頭が熱くなりました。

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