<この体験記を書いた人>
ペンネーム:やまと
性別:女
年齢:40
プロフィール:コロナ禍をきっかけに離職した主婦です。
3年ほど前の出来事です。
当時私がいた会社に、清掃員として20歳くらいの外国人女性が働いていました。
いつも一生懸命できれいに掃除をしてくれていて、目が合うとあいさつもきちんとしてくれて感じの良い人だったので、どこの国の人だろうと思い、ある日声をかけてみました。
彼女はミャンマーの出身でした。
私はミャンマーに旅行したことがあり、ミャンマーの文化や料理に興味がありました。
そのことを彼女に伝えると「本当!? うれしい! ミャンマーに行ったことのある人は珍しい」と言ってとても喜んでくれました。
ミャンマーに興味のある日本人にも会ったことがなかったようです。
それから彼女と会うたびに、ちょくちょく話をするようになりました。
彼女は日本で学校に通いながら清掃のアルバイトをしていて、友だちとルームシェアするなどの節約をして、祖国の家族に送金もしているということでした。
「会社の向かいのラーメン屋さん、ミャンマーの麺に味が似てておいしいんだ。日本はご飯が美味しいからうれしい!」
「日本の化粧品をお母さんに送ったらとっても喜んでくれたから良かった!」
いつも楽しそうに話してくれる彼女は日本を好きになってくれたようで、私もとてもうれしい気持ちになりました。
そんなある日、彼女に夢について聞いてみました。
すると彼女は、ミャンマーに帰って掃除の仕事をしたいと言います。
なぜ掃除? と思い聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「掃除はどんなときにも必要でしょう。世界中どこでも必要だし、戦争が起きてもどんな社会になっても、掃除は必要だから掃除の仕事は絶対になくならない。日本人はとてもきれい好きで掃除の技術もすごいから、日本で掃除の会社に入って技術を勉強して、ミャンマーで掃除の会社を作りたい!」
何気ない質問にとても深い答えを返され、びっくりしました。
掃除のアルバイトも、お金のためだけにやっているのではなく夢のためにやっているんだ、だから一生懸命なんだと納得しました。
それからしばらくして、彼女から別の清掃会社に就職が決まったと言われました。
夢への第一歩を踏み出してよかったと思う反面、もう会えなくなるのは少し寂しい気持ちでした。
それから彼女が清掃のアルバイトに来ることは徐々に減りました。
最後に会ったときずいぶんと疲れていた様子だったので気になりましたが、彼女は「研修が大変で...でも、がんばる!」と笑っていました。
2021年初めにクーデターが起きて以降、ミャンマーのニュースを目にすることが増えました。
彼女はどうしているかな、今はどこにいるのかはわからないけれど、どこかで元気に掃除をしているといいなと思います。
そして、ミャンマーの情勢を聞くたびに「どんな社会になっても掃除は必要」と言っていた言葉の重みを改めて感じています。
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