<この体験記を書いた人>
ペンネーム:れもん
性別:女
年齢:46
プロフィール:二人の息子を持つシングルマザーです。近頃は花粉症に悩まされています。
私は46歳のシングルマザーです。
19歳と14歳の息子、78歳の実父、72歳実母の5人で暮らしています。
今から13年前、私がまだ旦那と暮らしていた時のことです。
その頃、パートに出て子どもを保育園に預けながら、介護ヘルパー2級の資格を取りました。
資格を取った後はスムーズに介護職に就き、最初の職場では訪問介護を受け持っていました。
そこでは大体一日に3件から4件のお家を訪問し、それぞれの利用者さんに合わせた介護をしていました。
利用者さんは男性、女性、一人暮らし、家族と同居など、状況はさまざまです。
ですが、ほぼ全員に共通して言えることがありました。
それはみなさん心の奥底に淋しさを感じていたのではないかということです。
そう感じた理由は、私が担当していた利用者のほとんどが、私のようなヘルパーが来るのをとても楽しみに待っていたからです。
特に女性は、とにかく誰かとお話がしたいというような気持ちが伝わってきました。
そうした時、難しいのがお茶やお茶受けを出された場合の態度です。
一日に何件ものお宅にお邪魔するため、そんな暇がないという理由もありますが、ヘルパーは訪問先で出されたものはいただかないのがルールです。
ただ、出されたものを断ると不機嫌になったり、悲しんだりする利用者もいたため、当時、私がいた事業所では、業務に支障が出ない範囲でいただくこともありました。
ルール違反なのは分かっていますが、お年寄りの心のケアをするにあたり、できるだけ一緒に食べてあげたいよね、というのが、上司の考えだったのです。
中には自分の誕生日を一緒に祝ってほしいと言って、ケーキを用意してくれていた方もいました。
たとえ自分のお腹がいっぱいでも、このようなときはさすがに断る気にはなれません。
身をもって孤独なお年寄りが多いと実感していました。
私が担当していたAさんもまた孤独なお年寄りの1人で、その日も私が訪問する時間を楽しみにして待ってくれていました。
ある日、Aさん宅にお邪魔すると、ふかし芋が準備されていました。
「美味しいから食べて」と勧められ、断り切れず、口元まで持ってくるとちょっと匂いがヘンです。
私が少し「躊躇」していたのが「遠慮」に見えたのでしょう。
「美味しいから是非食べてね。このお芋甘いでしょう? ね?」
Aさんは私の顔を覗き込むようにしながら、さらに勧めてきました。
匂いがだいぶおかしくなっていたので断りたかったのですが、Aさんを傷つけずに断る方法が数秒の間に見つけることができません。
散々迷った挙句、意を決してヘンなニオイのお芋をパクリ。
そのまま勢い任せてたいらげてしまいました。
帰り道、軽い食あたりだったのか、それとも精神的なものからだったのか、みるみると気分が悪くなって嘔吐してしまいました。
こういうことがあってはいけないから「訪問先で出されたものはいただかない」というルールがあるのかもしれないな、と苦しい中で考えました。
それ以降、私はどこのお宅に行っても「糖尿病予備軍」ということにして、訪問先では何も食べない姿勢を貫きました。
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