くーちゃん、ありがとう。障がいを持って生まれた息子の回復と愛犬の死

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ペンネーム:てんてん
性別:女性
年齢:48
プロフィール:プロフィール:中学生、小学生、保育園児の子どもをもつシングルマザーです。3番目は障害をもって生まれてきました。私自身は片耳難聴をもっていますが、前を向いて子育てと共に自分の新しい人生を開拓している最中です。

※ 毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。

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私には、中学3年生を筆頭に小学3年生、保育園年長児の3人の子どもがいます。真ん中の子どもが1歳7カ月の時、当時のパートナーが急に犬を飼うと言い出しました。私自身は幼少の頃、犬に吠えられてびっくりして泣いてしまったという出来事があり、犬は少し苦手でした。そもそも生き物を飼うということ自体考えたこともありませんでした。でも、子どもたちは大喜び。そんな中、生後半年でくーちゃん(仮名)は我が家へやってきました。その可愛い仕草に私もメロメロ。今まで犬が苦手だったなんて自分でも思えないくらい、くーちゃんが大好きになりました。そして、2人の子育てと合わせてくーちゃんのお世話が私の日課に加わりました。
くーちゃんは、かなりの怖がり屋で、「びびりやな~」といつも獣医さんに言われていました。ちょっと触られるだけでもびくびく、きゅんきゅん鳴いていたからです。性格は寂しがり屋で同じ犬よりも人が大好き。1人だとかわいそうに思い、くーちゃんと一緒に行けるところには、必ず連れて行くようになりました。くーちゃんは我が家のもう一人の子どものような存在になりました。

そして、真ん中の子どもが2歳9カ月になったとき、3番目の子どもがお腹にいることがわかりました。時を同じくして、その頃からくーちゃんの抜け毛が増え、体重が減少し始めました。もともと我が家に来た時から食が細い子で、獣医さんにも「もっと食べさせて。体重増やそう。」と言われるくらい、食に興味のない犬でした。胃腸が弱く、体調が悪くなるたびに動物病院へ走りました。色々と検査もしてもらいましたが、はっきりした原因はわかりませんでした。脱水で倒れ、動物病院へ入院したこともありました。

くーちゃんが2歳3カ月の時、第3子が誕生しました。ところが、この子は心臓疾患等、先天的な障害をもって生まれてきたのです。産院を退院してすぐ別の総合病院へ入院したり、通院したりしていたので、第3子が生まれる前より、くーちゃんに関わる時間が減っていたのは否めません。くーちゃんはこの頃から、前にもまして嘔吐と下痢が頻繁に起こるようになり、室内での粗相が増えてきました。季節は冬だったので、ストーブの前にクッションを置くとそこで安心したかのように寝ていました。

具合が悪い中でも、第3子が増えたのはわかっていたようで、まるで「自分がこの子を守る」とでも言いたげな表情で、子どもの隣でじーっと座っていることもありました。子どもがくーちゃんにいたずらしても、怒ることはなく、まるでお兄ちゃんのように接していました。その姿を見るたびに、くーちゃんと第3子は目に見えないけれどしっかりと絆が結ばれているのではと思っていました。

第3子は生後半年で5時間に及ぶ心臓の手術を受けました。術後、少し危険な状態もあったのですが、その後の回復は主治医も驚くぐらい順調でした。第3子はどんどん元気になり、寝返りやお座りなど成長が進みました。それと反比例するかのようにくーちゃんの体調は下降していきました。粗相は毎日のようにあり、床で寝返っている子どもをあやしつつ、掃除をする...。こんな日がいつまで続くのだろうと悲しく思う日々でもありました。くーちゃんが余りにも食べないのでフードの種類を変えたり、好きなもの(白ご飯や味の付いていないお肉など)を食べさせようと試みましたが、やはり食べるのはほんの少量。出す方が多いので体重も減る一方でした。この時も検査をしましたが、やはり原因は全くわかりませんでした。

そして第3子の術後1か月検診の日。いつものようにくーちゃんはお留守番でした。水とフードを置いてケージに入れ、出かけました。

その日、主治医から「もう心臓は大丈夫。薬も今日からいらないよ。」と太鼓判を押され、安堵の気持ちで帰宅しました。

いつもなら、玄関に入る前から「ワンワン」と声がするのですが、その日は何も聞こえてこない。抱っこしていた子どもを布団に置き、急いでケージをのぞくと、冷たくなったくーちゃんがそこにいました。すぐに動物病院へ連れて行き、蘇生を試みてもらいましたが、くーちゃんが再び息をすることはありませんでした。吐いたものが喉に詰まって窒息状態になっていたとのことでした。

まるでくーちゃんが自分の命を第3子に渡して天国に行ってしまったような気がして、涙が止まりませんでした。

遺骨はまだ我が家に置いてあります。あれから5年たちますが、第3子は元気に毎日を過ごしています。笑顔もたえず、くーちゃんがご近所さんや子どもの友だちから可愛がられていたように、第3子も周りの方に可愛がってもらっています。くーちゃんの命は第3子にしっかりと絆として受け継がれている、そんな風に思えてなりません。

くーちゃん、ありがとうね。

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