<この体験記を書いた人>
ペンネーム:わんわん
性別:女
年齢:51
プロフィール:会社勤めの主婦。56歳会社員の夫、21歳大学生の息子と3人で首都圏在住。
25年前、当時26歳だった私は、短期間ですが派遣で仕事をしていました。
私の仕事は倉庫に預けられる荷物の伝票を扱う事務作業。
小さな会社だったので、派遣社員は私1人。
事務所には男性の席はあるものの、男性社員は営業や倉庫の荷物管理など外での仕事が多く、事務所内で常に仕事をしている社員は女性ばかり5人程度でした。
女性社員の構成は当時26歳の私より年上の30~50歳くらい。
仕事も親切に教えてくれて、仕事先からいただいたお菓子を食べながら休憩する時間もあるのんびりとした職場でした。
唯一の心配事は、職場の物理的な環境でした。
虫や爬虫類が建物内に入ってくる自然豊かな場所にあり、倉庫は虫にとって好立地物件。
数匹単位ではない、あの黒い虫が生息していることは早い段階で分かりました。
なぜなら倉庫の中で何度も見かけたからです。
いつも殺虫剤を持ち歩いているわけでもないですし、その1匹を駆除したところで根本的な解決にはならないので無視していました。
きっかけは、私が「ヤモリ」に情けをかけてしまったこと。
そこから全てが始まりました。
事務所の隅のひんやりした場所に、ひっそりと佇んでいるヤモリを発見したのは50歳くらいの女性社員。
伝票の集計に集中していた私は、彼女の「きゃー!」という乙女のような悲鳴に驚いて伝票の束を落としてしまいました。
他の女性社員たちはおそるおそる見守っているだけで誰も対処しません。
「どうする?」
5人は相談なのか押し付け合いなのか...会社員としては不毛な、ヤモリにとっては生死にかかわる恐怖の時間が続くこと10分。
新入りとして黙って様子を伺っていた私も、さすがにこの状況を無視して自分の仕事に戻るわけにもいきません。
彼女たちに付き合って立って眺めていましたが、微動だにしないヤモリがかわいそうになってきました。
小さな事務所なので野外へ続く出入口と、ヤモリとの距離は2メートル程度。
私は掃除用のちりとりとほうきを持ってきて、それらを使ってヤモリを野外に逃がしてやりました。
彼女たちからとても感謝されましたが、私のこの行為が、その後「G」担当になる原因になるとは思ってもいませんでした...。
ヤモリを逃がした数日後、また「乙女の悲鳴」が聞こえ、あの同僚が大騒ぎしながら倉庫から事務所に駆け込んできました。
「ヤツがまた出た!」
叫ぶものの、事務所に常備してある殺虫剤を手に倉庫に戻るわけでもありません。
他の女性社員も「ホント?」「どうする?」「こういうときに〇〇さん(男性社員)がいてくれたらねえ」などと言いながら、ちらちらと私の方を見ています。
私は「そうなんですか~」と言いながら座っていましたが、とうとう「乙女の悲鳴」を発した同僚に「悪いけど一緒に来てくれる?」と頼まれ、2人で殺虫剤を手に倉庫に向かうことに。
発見から15分くらい経過していたのでGは移動しただろうと軽く考えていたら、いました。
「あれよ! あそこにいるわ!」と指さしながら私の後ろに隠れる同僚。
私だってGは怖いし嫌いだし、この1匹を退治して解決する問題じゃないでしょう?
そう思いながらも仕方なく殺虫剤を噴射し、何とか仕留めました。
すると次には「死骸はどうする?」と尋ねられ、結局は私が紙袋をちりとりに見立てて動かなくなったGを回収し、何重にも包んで、事務所から一番遠いゴミ箱まで捨てに行くことに...。
その後は毎日のように女性社員の誰かから助けを求められG退治。
「自分で対処できないなら見つけてこないで!」と退治したGの数だけ私の不満も蓄積し、結局、契約を更新せずに3カ月で退職しました。
自分が嫌な仕事は他の人も嫌なことが多いはずです。
思いやりや不平等に意識を向ける人になろうと思えた経験でした。
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