アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。
息子の通う高校でPTAの会長に選出された時のお話です。
【前回】PTA役員の引継ぎ式で舐めきった態度をとる、新副会長。旧役員達はニヤニヤ
PTA新副会長の下条さんには不安しかなかったが、それでも決まったものは仕方がない。
総会前の本部だけの打ち合わせにも下条さんは出て来ず、通常ならば総会の前半は現副会長である私が司会で、後半は新副会長である下条さんが司会になるはずだが、この分だと総会も欠席する可能性はある。
「いやいや、総会後の歓送迎会があるから来るんやないかな?」
そう言ったのは会計の黒木さんだった。
けれどももし来たとしても引継ぎもいい加減で帰ってしまい、この打ち合わせにも来ないんだから本番で中途半端な事をされたら困る。
総会の場で思いつきで好き勝手な事をされた時の方が困るのだ。
よって、後半の司会は黒木さんにお願いする事にし、新旧本部の皆さんも賛成してくれて黒木さんも受けてくれた。
本来であれば新副会長は黒木さんにお願いするつもりだったのに...。
帰宅してから、下条さんにはメールでその事を分かりやすく書いて送信した。
理由は引継ぎも十分ではなく、打ち合わせにも欠席したので代わりの方にやって頂くと書いた。
念のために、新旧本部役員の皆さんにも同じ文章をメールで送り、後になって下条さんから「聞いてない!」と言わせないようにした。
今ならスマホのLINEで送信し「既読」が付けばそれが見た証拠になるが、当時の連絡手段は電話とメールとファックスしかなく、「送られてない・見ていない」とシラを切られたらどうしようも無かった。更に念のためとして、黒木さんが下条さんに「総会では私が司会をする事に決まりました。」とメールを送ってくれた。
「だって、かづさんが下条さんにだけ送らなかったって言われたら困るやん? 私も送ったんやから、これで見てないは本人の責任やわ」
ここまでするのは意地悪な様だが、長きに渡るPTAの経験上、嘘がバレてもとことん言い逃れに終始する人は結構いるのだ。
結局その日の夜も翌日もその翌日もと、何度電話をかけても留守でメールを送っても下条さんから返事は無かった。
総会の日が来た。
当日は開始1時間前に集合し、会場や資料のチェックなどをする事になっていた。
小中の頃はあらかじめ総会資料が子ども経由で配られていたのだが、この学校は総会当日に受け付けで配り、同時にクラス名簿にチェックする。
当日不参加の方の分は、本部総出で総会資料を封筒に入れ、表に学年クラスと生徒の名前を記入して、各クラス担任から生徒に渡して貰っていた。
新旧役員が揃ったものの、やはり下条さんは来ていない。
「今日は欠席ですか?」と何度メールを送っても返事がない。
まぁ、絶対に来て頂かなくては困る様な仕事を任せているわけでもないので、むしろいっその事来ないならそれはそれで安心できる。
そうこうしているうちに開始時刻が近づき、次々と出席者の皆様が来場してきた。
正面には会長を中心に現本部役員が座り、出席者席の最前列には新本部役員が座る。
他の出席者が座らないようにと、椅子の背もたれには【本部】と書いた紙が貼られている。
開始5分前になり、皆さんに着席を促すアナウンスをするためにマイクを握ったその時、誰かが駆け込んで来た。
下条さんだった。
「ハーッ! ハーッ! この学校の坂、相変わらずきついなー!」
黙って大人しく入ってくれば目立たないものを、最後に現れた大物の様にガハハと笑いながら出席者の中を正面に向かって歩いてくる。
もう保護者の皆様の顔が「誰?」と言いたげで、おまけに下条さんが座った席が最前列の貼り紙が貼られている席だったものだから余計にギョッとしていた。
「ごめん! ごめん! 喫茶店で朝ごはん食べてたらもうこんな時間で慌てて来てん!」
この際理由はどーでもいいから黙ってほしい!
「そやそや、資料貰える?」
打ち合わせの時に資料を確認のために貰い、下条さんには生徒経由で渡しているはずなのに新副会長が資料も持たずに総会に来たのか...。
「メールやファックスでもお送りしたように、今日の後半からの司会は黒木さんにお願いしていますから」
私は出席者に背を見せるように立ち、下条さんの耳元で小声で言うのと同時に、自分でもわかるくらい冷めた目で下条さんの目を見て言った。
その後、前半の報告関係が終わり、続いて新年度役員の発表と合わせて承認された。
「では承認されましたので、新旧役員の交代をお願いします」
前会長をはじめ退任する役員は最前列の席に、新役員は正面の役員名が書かれてある席に移動をする。
この時だった。
下条さんが「副会長」の席に座った瞬間場内がざわついた。
「えー...、あの人が副会長...??」
「噓でしょ! プッ!」
あちらこちらからヒソヒソと聞こえる驚きの声。
まぁ、無理もない。
そりゃあそうでしょうよ。
私たち自身がそう思っているんだから。
それには下条さんも気が付いたようで、さっきの勢いが消えて下を向いていた。
もうずっとそのままでいてください。
後半の司会は会計の黒木さんがすると言うと、ここでもまた軽く会場がざわっと来た。
まぁね、副会長がその場にいるのに会計が司会ってあまり聞かないもんね。
恐らくその時の私は、「こういう状況ですのでなにぶん皆様ご理解してくださいませ!」と目で訴えかけていたんだと思う。
黒木さんの司会でスムーズに進み、質疑応答も全て私がお答えして総会自体は大成功で終わった。
さぁ、後は夜に開かれる例の歓送迎会だ。
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。