アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。
息子の通う高校でPTAの副会長に任命された時のお話です。
【前回】「PTA会長は男やないと格好がつかん」次年度の会長選出で発覚したありえない取り決め
次期PTA会長の選出委員会当日の夕方、携帯が鳴ったので見てみると、そこに表示されていたのは元会長の米沢さんの名前だった。
「えっ? なんで米沢さん??」
電話に出るまでの数秒間で、頭の中が色々と目まぐるしく動く。
「役に立たなくてもとにかく会長は男じゃないと格好が付かん。雑用は女にやらせればいいんだから」と校長が言っていた事は、選出委員の3年達だけでなく、当然米沢さんも聞いているはず。
男の新会長決定で、「残念だったわね」とでも言いに電話をかけて来たのか。
気が重かったが電話に出た。
「かづさ~ん。米沢で~す♪」
米沢さんの明るい声が余計に私を不安にさせる。
「こんばんは。どうかされましたか?」
携帯を握る手に力が入る。
嫌味の一つでも言われるのかと身構えてしまう。
「次期会長にかづさんが選出されました~♪ おめでと~♪」
「えっ...??」
自分の耳を疑うとはこの事だ。
「は??」
「もう誰かから連絡あった?」
「いえ...、誰からも...」
「選出委員会が終わった頃に学校に電話してね。かづさんが次期会長に決まったからって聞いて、そしたら私から連絡入れるからって言うたんよ。おめでと~♪ 良かったねぇ♪」
「はぁ...、またなんで私が?」
おめでとうと言われても、即座にありがとうとは言えなかった。
頭の中に「?」がぐるぐる回って、考えがついていかない。
「選出委員の3年生全員一致でかづさんが会長に決まったんよ。また明日にでも先生方から連絡が来ると思うから、これからもPTAをよろしくね♪」
「3年生全員一致ですか!?」
「そう、全員一致♪」
いったいなにが起こったのか、あの3年生たちが私を選ぶなんて考えられない。
それも全員一致だなんて尚更の事だ。
米沢さんは何度もおめでとうと言い、終始声が弾んでいた。
電話を切ってからも、なにかこう騙されているような気さえした。
けれどもこんな事で私を騙したとて、米沢さんになにも得になる事は無い。
ひとまず自分を落ち着かせ、同じ学年の黒木さんに電話をかけて今聞いた話を伝える事にした。
「いや~! おめでとー!! キャー!!」
黒木さんの喜びように若干驚きを隠せなかったが、私自身まだ半信半疑なのだと言った。
「良かったー!! とりあえず今からみんなにメール回しますねー!」(当時はスマホの無いガラケーの時代)
黒木さんとの電話を切った後も、「えっ? 私会長に選ばれちゃったの? ほんとに??」と、喜びがじわじわとわいてくるような気がするものの、何がどうなってこうなったのかわからず、なんとも気持ちが悪い。
翌日、坂田先生から私が新会長に選出されたと連絡が来た。
「でも、よくあの3年生が私を選びましたよね。またなんでですかね?」
新会長に選出されたことについては快く引き受けたけれど、素直に喜ぶことが出来ない不信感を正直に坂田先生に伝えた。
すると坂田先生は驚くことを言った。
「いや、あんたがPTAを辞めるって言うて帰った後に、本部全員が辞めるって連絡してきたんや」
「ええっ!!!」
「『かづさんが辞めるって聞いたけど、私たちはかづさんと同じような事は出来ません! かづさんが辞めるなら私達も辞めます!』って言うてな」
恐らく先日私が「役に立たないのが会長になるんやったらPTAを辞めると言うて来た」と黒木さんに話した後、彼女が他の役員達に話したのだろう。
私がPTAを去ったら、当然残された役員達の誰かが私が一年間やってきた事と同じことを求められるのは分かり切ったことで、とんでもないと思ったのだろう。
「それを選考委員に話して、(次期会長を頼んでた)飯尾さんにも伝えたら、飯尾さん自身から辞退したいって言うて来たんや。『サポートしてくれるんやったらってことで受けたんで』って断ってきた。結局飯尾さんは委員も辞める事になった」
なるほど...。
それで「仕方なく」私に決まったって事やったのか。
米沢さんの言った【全員一致】の意味が分かった。
「でも、米沢さんがえらい明るい声で『おめでと~♪』とか言うて電話してきましたけど? なんや胸騒ぎがしますけど(笑)」
米沢さんの妙にうきうきした声が気になる。
すると坂田先生はこう続けた。
「あんたが会長になると副会長のポストが空くやろ? そこに米沢さんの推薦で下条さんっていうのが入る事になったんや」
「へっ? 下条?? どなたです??」
「また顔合わせの時に紹介するわ」
次期副会長には黒木さんを推そうと思っていたのに、全く知らない人が副会長になるやなんて...。
それも米沢さんの推薦って...。
けれども一年前の私も、一時は学校側のスパイとして送り込まれてきたと思われていたくらいなんで、同じ状況だったのだろう。
一抹の不安はあるものの、とりあえず私が次期会長に決まったことは確かだった。
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