みんなのケア

中高年の健康に重要な「たんぱく質」。フレイル予防にも必要なたんぱく質摂取のポイント

ウェルネス総合研究所による「ウェルネストレンド白書Vol.2」(2022年5月)によると、20代、30代と比べて60代、70代はたんぱく質の摂取率、摂取意向率が少ないことが分かりました。いま、たんぱく質の重要性が見直されています。今回は、立命館大学スポーツ健康科学部教授 藤田 聡(ふじた・さとし)先生に、「たんぱく質摂取のポイント」について教えてもらいました。

※この記事は定期誌『毎日が発見』2022年10月号に掲載の情報です。

たんぱく質は体を作る素

たんぱく質は、筋肉や骨、皮膚、内臓などの他、体の機能を調整するホルモンや酵素、血
液、免疫細胞などを作るために欠かせません。また、体を動かすエネルギー源にもなります。

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各部位のたんぱく質の割合
※水分を除いた重量に占めるたんぱく質の割合、参考:『数値でみる生物学生物に関わる数のデータブック』(丸善出版、著:R.Flindt)

朝食はたんぱく質が不足しがち

たんぱく質は、毎食バランスよく摂ることが理想です。1日でのたんぱく質の量は十分だと思っても、1食ごとで見ると、特に朝食は不足しがちな人が大半。朝食こそ、たんぱく質をたっぷり摂るよう意識しましょう。

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※厚生労働省「国民健康・栄養調査(2012 年)」を参考に成人の3食のたんぱく質摂取の平均パターンを算出。

出典:Mooreet al. J Gerontol 2015、Paddon-Jones and Rasmussen Curr Opin Clin Nutr Metab Care 2009 より作図

1日のたんぱく質摂取目標量(女性)

年齢    摂取目標量
50~64歳  68~98g
65~74歳  69~93g
75歳以上  62~83g

※出典:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より。身体活動レベルが普通の人の場合(通勤、買い物、家事、軽いスポーツなどができる程度)。

食品中のたんぱく質量の例

プレーンヨーグルト
4.7g/130g当たり

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牛乳
4.0g/120g当たり

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鶏もも肉(皮つき)
6.6g/40g当たり

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絹ごし豆腐
7.4g/140g当たり

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6.7g/55g当たり

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たんぱく質は、筋肉の維持に必要とばかり思われがちですが、実は健康な生活に欠かせない栄養素です。

「筋肉や内臓、骨、血液など、体の大半はたんぱく質でできており、髪や爪、肌の原料にも。感情や記憶、睡眠に関わるホルモンや免疫機能の維持にも不可欠です」と、藤田聡先生。

たんぱく質は、年齢が上がるほど、意識的に摂る必要があります。

「加齢による筋肉量の減少は、サルコペニア(※1)の原因となる他、糖・脂質の代謝異常にもつながり、糖尿病など生活習慣病の発症リスクも増加させます。筋量を維持するためには、たんぱく質の適切な摂取が欠かせません」

では、摂取のポイントは?

「たんぱく質は体に貯めることができないため、毎食十分な量を摂る必要があります。1日の摂取量が足りていたとしても、1食ずつが偏っていると、フレイル(※2)になりやすいことも分かっています。体の中のさまざまな組織を作るには、アミノ酸、なかでもロイシンを多く含む食品を摂るのが重要。肉や魚、大豆など多くに含まれますが、特に体への吸収が早いのは牛乳やヨーグルトのような乳製品です」

必要量を毎食に分けて摂ることを意識して、健康な体作りに役立てましょう。

※1 加齢などが原因で筋肉量が減少したり筋力が低下したりすること。

※2 加齢とともに体や心の働き、社会的なつながりが弱くなった状態。要介護へ移行する手前の段階。

取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子

<教えてくれた人>

立命館大学スポーツ健康科学部教授 
藤田 聡(ふじた・さとし)先生

2002年南カリフォルニア大学大学院博士号修了。06年テキサス大学医学部内科講師、07年東京大学大学院新領域創成科学研究科特任助教、09年立命館大学。12年より現職。

この記事は『毎日が発見』2022年10月号に掲載の情報です。
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