忘れ去られた高揚感。便利な生活はセックスをダメにする/大人の男と女のつきあい方

pixta_29337246_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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便利な生活はセックスをダメにする

世界的スキンメーカー「デュレックス」が行なった国別調杏によれば、年平均でもっともセックスの回数が多い国は、ギリシャだそうである。その数、年間一六四回、およそ中二日。対するわが日本は四八回、何とか週一回。三分の一以下である。

その栄えある首位の国ギリシャ。エーゲ海の青い海とまぶしい太陽、白い建物が立ち並ぶ美しい街に象徴される国。私も二度訪れたことがあるが、イタリアやフランスとはまた趣の異なる独特の雰囲気を漂わせている。夜ともなると、ホテルのバーでは特産の酒であるウゾの松ヤニの香りが満ちている。

男性も女性も骨格のしっかりした体躯(たいく)で、まさにギリシャ彫刻のような面持ちをしている。見るからに精力的。私がかの地を旅したときは、セックス回数の調査など知る由もなかったが、ギリシャの人たちの印象を思い出して納得した。

一介の旅人の印象だが、日本の社会や日本人と違ってどこか泰然としていて仕事一筋、効率・利益優先、便利至上主義の風土とは趣を異にしているように感じた。商店街では午後の一時過ぎから四時頃まで店のシャッターは閉じられる。

「シエスタ」と呼ばれる昼寝の習慣だ。何しろ、シエスタに急ぐ人々のラッシュがあるというお国柄である。
日本なら、みんなが店を閉めるときこそビジネスチャンスだとばかりに、自分だけ店を開けて独り勝ちを狙う商店主が出てきそうだが、そんなこともない。だいいち、店を開けたところで、肝心の客が昼寝タイムなのだから商売あがったりである。

もちろん、都市部でもコンビニエンス・ストアなどもない。シエスタをとるために総じて晩ごはんは遅く、酒を飲みながら食事をする「タベルナ」は数多く軒を連ねて営業しているが、日本の都市部のようにブティックや一般商店は開いていない。

その代わり始業時間は早く、午前七時くらいからオフィスも活動開始になる。一部にはシエスタを見直す動きがあるようだが、ほとんどの人たちは朝日が昇る頃から働き、しっかりと昼寝をして、酒を飲んで食事をして、夜は寝るという、古来、続けられてきたパターンを変えることはないようだ。テレビも日本のようにチャンネル数は多くないし、二四時間放送などもない。

そうなれば、夫婦が床についてチャレンジするテーマはそう多くない。
それに比べて、日本の生活パターンはどうだろう。朝、起きれば新聞が届いている。テレビのスイッチを入れれば地上波だけでも六~七チャンネル。ケーブルテレビや衛星放送を含めれば数え切れないほどのチャンネル数。見たい番組が同じ時間に重なれば録画する。

そうかと思えば、レンタルビデオ店は深夜までオープン。それでも飽き足らなければ、パソコンからどんな映画でもダウンロードすることもできる。小腹がすけばコンビニがある。それどころか、おなじみのピザのケータリングはもちろん、最近では寿司、中華、釜めしまで運んでくれる。

「やれること」が多すぎるのだ。やれることが多すぎれば「ねえ、あなた、もう寝ましょうよ」「そうだね」とは、なかなかならない。
ちなみに、先の調査の第二位はブラジル、第三位はポーランドとロシア。いずれも日本ほど生活に便利な国ではない。この便利さが、日本人からセックスを遠ざけているのではないだろうか。この調査によれば、総じていわゆる先進国のランクは低い。

便利な社会システムは自然現象ではない。それを昼夜問わずに支えている人間がいる。便利さ、効率を優先する社会は、それと引き換えに人間のストレスを生む。ストレスこそセックスの大敵である。セックスは必要ないというのであれば、とことんその便利さを享受すればいい。だが、私はご免だ。では、どうするか。

もちろん、会社を辞めて晴耕雨読、日の出とともに働いて日没とともに布団に入れとはいわない。だが、ダラダラ仕事をしない、惰性のつきあいをしない、満腹にしない、テレビを無意味に見ない。これだけでもストレスは緩和される。ちょっと考えて、最低限必要なことをコンパクトにすればいいのではないか。

ギリシャ人になるのは無理だが、たまにはパートナーとともにあまり観光化されていない海外の地を訪ねてみるのもいい。国内なら、ひなびた温泉地に行ってみるのもいいだろう。要はやれること、やらなければならないことの選択肢がかぎられるシチュエーションに身を置いてみればいいのだ。

日本人の多くは、情報によって頭のなかをパンパンにし、お腹もパンパンにしないと落ち着かない身になっているのではないか。ある意味で飢餓感が頭と胃に集中しすぎているのである。
頭と胃のなかに、ちょっと「休耕地」をつくってみればいいのだ。そうすれば、長らく忘れていた高揚感が徐々に体内によみがえってくるのではないか。持って生まれた人種的なフィジカル面の差はあるにしても、この不名誉な現状を打開したいものである。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です
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