「隣の芝生」に入りたいなら、それ相応の覚悟と準備を/大人の男と女のつきあい方

「隣の芝生」に入りたいなら、それ相応の覚悟と準備を/大人の男と女のつきあい方 pixta_30523153_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

◇◇◇

前の記事「恋愛に定年なし!「色ボケ爺」こそ最大級の褒め言葉である/大人の男と女のつきあい方(31)」はこちら。

 

不倫の悲劇、その原因は一つだけ

不倫が生んだ悲劇を一つ、ご紹介しよう。
ある中小出版社の辣腕(らつわん)編集者が新人の女性作家の担当となり、ほどなく男女の関係になってしまった。ともに既婚者で子どももいる。二人がつきあい出すと同時に、その作家の作品がベストセラーになった。その後も、彼女が世に出す作品が次から次へとヒットとなっていった。もともと作家に才能があったのだろうが、それを引き出した彼の編集者としての腕も確かだったのだろう。

言葉は悪いが、出版社側としては、いわば人質をとったも同然だ。二人の関係には目をつむって自由にさせた。その結果、会社には膨大な利益が生まれた。中小出版社としてはいままで経験したことのない億単位の金がどんどん転がり込んできた。このままいけば、彼の出版人としての前途は洋々。間違いなく取締役の座が見えてくる。それどころか、社長の椅子も夢ではない。

編集者と作家、編集者と漫画家という間柄での恋愛は、マスコミ業界にいれば以前からよく耳にする。めでたく結婚に至るケースもあれば、大人の関係に終始し、静かに進行して静かに終焉(しゅうえん)を迎えることもある。

だが、ダプル不倫であるこの二人は事情がちょっと違った。何年か関係が続くうちに、女性作家が離婚して彼と結婚することを望みはじめたのである。だが、彼には結婚の意志はない。業を煮やした作家が最終決断を迫った。彼の答えは「ノー」である。

作家は思い切った手段に出た。自分の著作権をすべて、その出版社から引き上げるといい出したのだ。彼女の作品を出版する会社はいくらでもある。
彼女は愛情の冷めてしまった夫との生活に終止符を打ち、彼との新生活に賭けるつもりだった。だが、そのもくろみは外れた。予想もしていなかった彼の答えである。人一倍プライドの高い作家は、その仕返しに不倫相手にとってもっともダメージの大きい道を選んだのである。

不倫でスタートした二人の恋だったが、女性のほうは何年かの恋愛の後、終点に「結婚」という駅を見いだしはじめていた。だが、男は女性より「社長」という駅しか見ていなかった。
「私を遊び相手、出世の手段としか思っていなかったのね」
プライドを著しく傷つけられた作家は、その宣言通りに著作権を他社に持っていき、結果、男の出世の道は途絶えてしまった。

この悲劇の原因は男の側にある。二人の関係を続けていたとき、女性の恋愛モードが変わってきた瞬間を見逃したのだ。「KEEP OUT(立ち入り禁止)」のテープを女性がくぐり抜けた瞬間があったはずである。それは言葉やしぐさに間違いなく表れていたと思う。
「この先はちょっと......」
というときを見逃してしまったのだ。それに気づけば、女性は引き返すことができたかもしれない。

不倫を奨励するわけではないが、糾弾するつもりもない。「隣の芝生は青い」ではないが、男女を問わず、結婚した身であっても配偶者以外の人間と一時の恋を愉しみたいと思っても罪にはならないだろう。
「隣の芝生は立ち入り禁止」を決めているなら、それはそれで結構なこと。だが、思い切って、隣の芝生に足を踏み入れてみたいというなら、それ相応の覚悟と準備が必要だ。

とくに家庭は大切という前提があるならば、その意志を折に触れて相手に明確にしておくこと。そして、不倫の秘密はお互い厳守。これが守れないなら、火傷する前に別れることだ。
ある既婚者が、かなり年下の女性と不倫をしているとき、相手の女性が「奥さんを大切にしない人は私も大切にしてくれないからイヤ」という言葉を口にしていたそうだが、不倫をしている男にとって理想的なそんな感情を、いつまでも保っていられないのがまた女でもある。

 

次の記事「忘れ去られた高揚感。便利な生活はセックスをダメにする/大人の男と女のつきあい方(33)」はこちら。

 

川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

「隣の芝生」に入りたいなら、それ相応の覚悟と準備を/大人の男と女のつきあい方 otoko.jpg
『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

 
この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です

この記事に関連する「暮らし」のキーワード

PAGE TOP