ネットで話題の作品『赤ちゃんに転生した話』の書籍が2023年2月14日に発売されます。本作では、ブラック企業で過労死した主人公が、大人の心を持ったまま赤ちゃんへと転生するも、想像以上に赤ちゃんには制限が多く、大変なことを実感していきます。人気の理由は、赤ちゃん特有のしぐさや行動の理由がリアルに描かれており、子育て世代の気づきや共感を得られたことではないでしょうか。
医療従事者であり、一児の母でもある作者の茶々京色さんに「赤ちゃんの成長過程での体の発達に関わるシーン」について、どんなふうに描いているのか、こだわりを伺いました。
■大人目線で語られる赤ちゃんの苦労
『赤ちゃんに転生した話』の中でも、特に印象的なのは赤ちゃんの発育や発達について描かれた場面です。
「赤ちゃんの成長過程での具体的な事柄をどうやって伝えようか考えながら描いています」という茶々京色さんの思いが伝わってくるシーンの一つが、うつ伏せの練習をする回です。
病院で1カ月健診を受けた主人公の赤ちゃん(転生者・23歳男性)は、看護師からの「うつ伏せの練習を始めてもいい」との言葉を聞き、自宅に戻って挑戦してみるも...。
頭の重さに耐えきれなかったり、手の位置取りが悪くて背筋をうまく使えなかったり。
簡単にできそうに思えていたことができない現実に直面し、赤ちゃんとしての生活が大変なことに気づきます。
読んでいると、つい応援したくなるエピソードですが、同時に「赤ちゃんの成長ってすごいことなんだ」という発見にもつながります。
「うつぶせの他、寝返りやハイハイといった体の発達に関わるシーンは、いつも描くのが楽しみですね。自分の娘を見ていても、頭を上げる時は首じゃなくて背筋が動いているんだなと、改めて実感することもあり、そういった発見もきちんと裏付けをとって描いています。また、読者の皆さんから反響が大きかったのは、最初の頃に描いた原始反射(赤ちゃんが刺激に対して反射的に起こす動きのこと)の話ですね。例えば、赤ちゃんが急にびくっと動き、両手を上げて抱きつこうとするモロー反射や、本能的に乳首に吸い付く吸啜反射も原始反射の一つ。こういった反応は、赤ちゃんが生まれながらに持つ反射的な運動です。『知らなかった!』と多くの反響をいただきました」
■成長には個人差があることを実感。気になる最終話は?
茶々京色さんは医療従事者ということもあり、小児の発達に関する勉強も重ねてきたそう。しかし、出産や育児を経験して変わったことがあると言います。
「教科書の中では、生後何カ月で何ができるようになるという目安があります。しかし、うちの娘は発達が早く、8カ月ごろにはつかまり立ちをしていました。ただ、把握反射(赤ちゃんの手足に何らかの刺激を与えることで、無意識に握る仕草を見せること)から足をキュッと丸めたまま立つんです。足を痛めるのではないかと心配になり、家中の家具をどかして、ハイハイを促すようにして生活をしていました。娘の成長を間近で見ていると、成長の個人差は大きく、一括りにしてはいけないなと感じています」
赤ちゃんの成長に合わせて進行する本作ですが、茶々京色さんによると、「この話は赤ちゃんが1歳を迎えたら最終回を迎えます」とのこと。
1歳までというとあっという間に終わってしまい、残念な気もしますが...。
「1歳以降は赤ちゃんの精神発達が始まります。この作品ではそこまでは描かず、体の発達について正しく知ってもらえるように丁寧に描いています」とのことでした。
いったいどんなクライマックスを迎えるのか気になるところですね。
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム)