ひどい痛みで指が曲がらない、関節が太くなった、指の形がおかしい...。それらの症状、もしかしたら「へバーデン結節」かもしれません。患者数350万人以上とも言われる「へバーデン結節」ですが、原因自体はまだ解明されておらず、手指の痛みをそのままにしてしまっている人も少なくないそう。そこで今回は、麻酔科医・富永喜代先生による著書『全国から患者が集まる麻酔科医の へバーデン結節・手指の痛みの治し方』を紹介。具体的な症状や対処方法、自分でできる痛みをやわらげる治療メソッドなど解説していきます。
※本記事は富永喜代著の書籍『全国から患者が集まる麻酔科医の へバーデン結節・手指の痛みの治し方』から一部抜粋・編集しました。
【最初から読む】ひどい手指の痛み...もしかして「ヘバーデン結節」かも? 痛みを和らげる方法をチェック
「富永式10秒リラックス深呼吸」で心身の緊張をほどき、痛みをよせつけない体に
どんな病気でも、病気になる前に予防することが大切です。
手指も痛みを感じる前に、できれば回避したいもの。
そこで、家事などで指が疲れた際などにできる、痛みを起こさないようにするための簡単なケアをご紹介します。
「富永式10秒リラックス深呼吸」は、緊張やストレスで興奮状態の自律神経をゆるめ、体を強制的にリラックスさせるというもの。
緊張やストレスは自律神経のひとつ、交感神経を優位にさせます。
この状態になると、体はいつ戦ってもいいように臨戦状態に。
血管が収縮して血流が悪化、手指の血行も悪くなり、痛みを感じやすくなってしまうのです。
こんなときに自律神経のスイッチを切り替えて、緊張をやわらげるのが「10秒リラックス深呼吸」。
やり方は、まず目を閉じて鼻の奥に冷たい空気を送り込むイメージをしながら、鼻から息を吸い込みます。
次に口をすぼめ、10秒かけてゆっくり息を吐き切ります。
これを3回繰り返します。
全身の筋肉の緊張がゆるみ、血流がよくなるのを感じるはずです。
10秒リラックス深呼吸のやり方
1.目を閉じて、鼻の奥に「冷たい空気を送り込む」イメージを思い描きながら、鼻から息を吸い込む。鼻の奥にある血管を意識して。
息を鼻から一気に吸い込む
2.今度は口をすぼめ、細く長く出すようにして息を吐ききる。だいたい10秒くらいかけてゆっくりと。これを3 回繰り返す。
口をすぼめ、息を口から細く長く吐き切る
脳をリセットするための趣味を持ちましょう
痛みの感じ方は人それぞれ違います。
特に慢性的な痛みを抱えている人は、痛みが心の動きと密接に関係していることが多いのです。
慢性的な痛みがあると気持ちは当然沈みがちになり、何もかもネガティブにとらえる傾向に。
この思考パターンに陥ると、さらに痛みを加速させるという負のループとなってしまうのです。
ストレスのたまった脳をリセットし、痛みのループを断ち切るには、趣味を持つことがおすすめです。
1日数分でできることでいいので、趣味や好きなことに集中すると、そのときだけは心が違う世界に向き、脳がリセットされます。
忙しい仕事の合間をぬって、1日1度、数分間だけでも、「好きなこと」に意識を向ける時間を作ってはいかがでしょうか。
余裕があれば、新しいことに挑戦するのもよい方法です。
植物を育てたり、何かペットを飼うのもいいかもしれません。
楽しいこと、やりたいことをすると、幸せホルモンと言われるセロトニンの分泌も活性化されるので、より気分が上向きやすくなります。
がんばれない日があっても大丈夫!家族や周りの人を味方に引き込みましょう
手や指は、日常生活の中でひっきりなしに動かす所です。
そのたびに痛んだり、しびれたりするのは、大きなストレスになり、生活の質(QOL)が著しく下がってしまいます。
しかし、本人がこんなにつらいのに、痛みは他人には見えないので、周囲にわかってもらえず、それがますますストレスを増やしているケースも多く受けられます。
「自分は手の痛みを我慢して家事をこなしているのに、家族がわかってくれずに文句を言うのがつらい」などと訴える患者さんも、多くいらっしゃいます。
そこで提案です。
つらいときは素直に家族や周りの人に伝えてみてはいかがでしょう?
痛みに耐えていることを理解してもらえれば、文句ではなくねぎらいの言葉をかけてくれることも増えるでしょう。
また、自分で自分をほめることもおすすめです。
「こんなに痛いのに今日もよくがんばったね」と自分を声に出してほめてみましょう。
一人で抱え込み過ぎず、周囲と分かち合えば、ストレスで痛みが悪化することを避けられます。
念入りなネイルケアをすると気分もリフレッシュ
へバーデン結節では症状が進行すると、関節部分に水ぶくれができたり、関節が変形してきます。
これは女性にとっては深刻な問題です。
自分の指が節くれ立って太くなったり、不自然に曲がった様を目の当たりにするつらさは計り知れません。
人によっては痛み以上に、この見た目の変化によって大きな心理的ダメージを受けることも多いのです。
さらに変形した手指を人に見られることが苦痛になって隠すように。
誰にも見られたくないというストレスが、痛みをさらに増大させてしまうこともよくあるケースです。
自分の手指を見たときに悲しい気持ちにならないように、念入りにネイルケアをして美しい状態を保つようにしましょう。
ネイルサロンでとびきりおしゃれに仕上げてもらうもよし、丁寧に爪をポリッシュしてピカピカにするもよし、手軽にシールタイプを使うもよし。
気分転換にもなって、手に対するコンプレックスを弱めることができます。
アイドルのポスターを壁に貼ってLET'Sエア恋愛!?
女性の脳の仕組みはとても不思議にできています。
映画やドラマのラブストーリーにはまり込み、集中して見ているときは妄想の恋愛に陥っている状態で、頭の中には自分の痛みを癒すホルモンがたくさん出ているのです。
たとえリアルでなくても、アイドルや俳優などに「エア恋愛」をすると、脳が活性化してβベータエンドルフィンという物質が出ます。
これは脳内麻薬とも呼ばれ、鎮痛効果や気分の高揚、幸福感が得られるもの。
自分で作り出す痛み止めのようなものが、エア恋愛によって生み出されるのです。
この女性特有の脳のシステムを大いに活用しましょう。
部屋に好きなアイドルのポスターを貼ったり、DVDのストーリーで繰り広げられる恋愛模様に自分を投影して、どんどんエア恋愛を楽しみましょう。
βエンドルフィンの作用で痛みをコントロールすることができ、気分も上向きになること請け合いです。
自分だけのゴールデンゴールを目指して前向き思考で進みましょう
長いこと手指の慢性痛に悩んでいる方にとっては、痛みが全くないゼロの状態に戻りたいというのが最大の望みでしょう。
また、変形のない、若い頃のような手指を取り戻したいという声も多く聞きます。
しかし残念ながら、それは難しいと言わざるを得ません。
人間は年齢を重ねるにつれて、体の組織は衰え、機能も落ちていきます。
手指に関しても、筋肉や腱は弱くなり、関節も変形します。
この加齢による誰もが避けられない変化と、長年積み重なった生活習慣などから引き起こされた骨や関節のダメージ。
これらが合わさって起きている現在の痛みや変形をなくすことは、現実的に難しいのです。
みなさんに目指していただきたいのは、痛みの全くない状態ではなく、「自分らしいイキイキとした生活を取り戻せるようになるまで痛みを軽くすること」です。
ずっと苦しんでいる痛みが少しでも軽くなれば、家事や仕事も今までよりは上手くこなせるようになります。
すると心に希望がわき、気持ちも前向きになってきます。
痛みが全くないわけではないけれど、その痛みと折り合いをつけながら、ハリのある毎日を送ることができるようになる。
それを目指していくのです。
そのために、まずは今の自分に合った現実的なゴール=ゴールデンゴールを設定しましょう。
そこに向けて小さな成功体験を積み上げ、着実に近づいていくことが、自分らしい生活を取り戻すための近道になります。
「友人と旅行に出かけたい」「趣味のパッチワークを再開したい」「家庭菜園にチャレンジしたい」......。
どんなことでもOKです。
実現可能な自分だけの「ゴールデンゴール」を具体的にイメージしたら、そこへ向かっていくための小さな目標を掲げ、それをひとつずつクリアしていきます。
まずは手を軽く握れるようになる。
それができたらグー・チョキ・パーのジャンケンに挑戦。
次は箸を使って食事を完食する。
このように小さな目標を掲げてクリアしていくと、そのつど達成感が得られ、自信が持てるようになってきます。
決して無理せず、着実に目標に向かって進んでいきましょう。
ゴルデンゴールに到達する頃には、症状を上手にコントロールしながら人生を楽しんでいる自分に、きっと気がつくはずです。