飛行機は飛ぶ原理が解明されていない怪物?! 身のまわりのモノの技術(5)【連載】

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飛行機を間近に見ると、「どうしてこんな金属の塊が飛ぶのか」と不思議に思う。そのメカニズムを調べてみよう。

飛行機が飛ぶ原理はいまだナゾのまま!

最もオーソドックスなのは、ベルヌーイの定理を用いた説明である。この定理は流線上で「流体の運動エネルギーと圧力の和は一定」と主張する。ということは、流体が速く運動すれば圧力は小さくなることになる。翼の形は上に膨らむ非対称な形のため、流体は翼の上側のほうが速い。そこで、翼の上側の圧力が減り、翼を押し上げる力(揚力)が働くという。

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この説明の基礎となるベルヌーイの定理は完全流体で成立する。完全流体とは粘性がなく渦が発生しない流体である。しかし、現実には粘性があり、渦が発生する。電線に強い風が当たるとヒューヒュー鳴るのは、この渦が原因である。したがって、ベルヌーイの定理だけで飛行機が飛ぶ原理を説明するのは十分ではない。実際、直線状の翼を持つ紙飛行機がよく飛ぶことを、これでは説明できないことになる。

そこで、次のような説明もなされる。板が空気の流れに対して仰角をもって置かれると、空気はその板に妨げられ、下向きに曲げられる。すると、作用反作用の法則から、板はその反対向きの力、すなわち揚力を得ることになる。この力で飛行機は飛ぶのだ、という説である。しかし、この説明では、かまぼこ型の翼を空気中で水平に動かすと揚力を得るという事実を説明できない。

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近年は、翼が空気を切るときに発生する渦が揚力を生むという「渦」説も登場している。実際、紙飛行機が飛ぶのはこの渦が原因であることが知られている。しかし、渦の理論はカオス理論の一つであり、最新のコンピューターでも精度の高い計算はできない。そのため、正確な空気の流れは理論的にはつかめないのである。

飛行機が飛ぶしくみは、これらの説明が一体になったものと考えられている。我々はしくみを完全に計算しきれない怪物に乗って旅行を楽しんでいるともいえるのだ。

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涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。
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