
『うちのワンコが、ニャンコが、死んじゃったらどうしよう』 (獣医師シワ男/KADOKAWA)第8回【全10回】
愛する家族、ワンちゃんやネコちゃんとの「お別れ」は、いつか必ず通る道。大人世代の飼い主にとって、その不安は切実なものです。書籍『うちのワンコが、ニャンコが、死んじゃったらどうしよう』(KADOKAWA)は、長年多くの動物を見送ってきた獣医師が、その不安を「安心」と「癒やし」に変えるためのヒントを伝えています。涙なしには読めませんが、読み終えたとき、きっと心の準備ができ、後悔のない看取りへの道筋が見えてくるでしょう。今回はこの本の中から「最期に、この子にとって本当に幸せな選択は何か?」という問いと向き合うために、知っておきたいことをご紹介します。
※本記事は獣医師シワ男 (著)による書籍『うちのワンコが、ニャンコが、死んじゃったらどうしよう』から一部抜粋・編集しました。
「もう年だから」というネグレクト
12~13歳の子に病気が見つかって、治療の話をすると、高額な検査や治療はしない前置きみたいに「もう年だから」と飼主さんがおっしゃることがある。12~13歳でそう言われると、僕はちょっと早いかなと思うことのほうが多い。最近は総合栄養食としてのフードも充実しているし、先端医療もできるようになったので、6年も7年もまだ先があると僕は感じる。16~17歳になると、この先の2~3年をどう考えるが思い浮かぶから、「もう年だから」とおっしゃるのもわからなくもない。
15~16歳なら検査で問題がなければ、全身麻酔で処置することもある。17~18歳になったら麻酔かけるのはどうしようかと迷う。
例えば、18~19歳で歯周病がひどくなった時。感染して顎の骨が溶けて頬から膿が出ている。発熱によって口が痛くて食べられなくなると、麻酔をかけた歯の処置をしてあげられなくなる。
感染治療で膿は出なくなっても、歯周病が治るわけでもなく、痛みと感染のコントロールをするために、抗菌薬や痛み止めを飲まなくちゃいけなくなる。けど、血液検査で肝臓や腎臓が悪くなっていると、痛み止めも使えなかったりして、にっちもさっちもいかない状況になる。できる年齢の時にできる治療をやっておいたほうがいいよ。
僕が伝えたいことは、歯周病が感染して顎の骨が溶けて、感染するまで放置しておいたり、脚を跛行して痛そうに歩いているのに手当てをしなかったり、体重が減って痩せてきているのに何カ月も何もせず、「もう年だから」と言ったりするのは違うということ。それを放置するのは、僕はネグレクトだと思う。犬猫がどれだけ痛みを我慢しているのか、「わからなかった」とおっしゃる飼主さんがいる。
犬猫から癒やしや心の支え、楽しさ、安らぎなどを与えてもらっているなら、犬猫のことを学び、理解し、敬意を示し責務を果たしたい。
「年だから積極的治療はしない」と言うなら、せめて痛みや苦しみに対するケアはしよう。十何年も共に暮らした家族を敬い、飼主として最低限の責任は果たそう。








