毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「ツッコミどころ多めの脚本と演出」について。あなたはどのように観ましたか?
【前回】朝ドラあるある「登場人物がみんなアホになる魔法(呪い)」...昔ながら朝ドラ感満載だった今週
※本記事にはネタバレが含まれています。
橋本環奈主演の朝ドラ『おむすび』第14週「結婚って何なん?」が放送された。
全体的に人物や事象の解像度が低めの本作のテイストは、2025年も健在。脚本も演出もちょっとずつの手間を惜しむ面倒臭がりの印象が随所に見られるが、これは「細かいこととかどうでもいいじゃん」というギャルの「アゲ~!」精神が貫かれているのかもしれない。
結(橋本)が糸島から帰り、迎えた歩(仲里依紗)、愛子(麻生久美子)と聖人(北村有起哉)、なぜかついてきた永吉(松平健)、佳代(宮崎美子)に翔也(佐野勇斗)も加わり、結と翔也が結婚の話を切り出す。
コミカルで大仰な劇伴にのせ、歩がヨーロッパは事実婚が多い、「離婚の何が悪いの?」「昭和のゾンビ」などと自由に発言、聖人は大反対というドタバタが描かれる。"ここ笑うところ"と劇伴と大袈裟なセリフ・芝居で分かりやすく示す昔懐かしい朝ドラ感満載だ。
そんな中、一部視聴者が注目したのは、この日突然リビングに現われた見慣れない長テーブル。おそらく通常の米田家の面々に永吉、佳代、翔也も加わった人数で並び切れないという芝居の都合上用意されたものだろう。これがリアルなら、無理矢理通常のテーブルに別の部屋の仕事椅子や子ども椅子など総動員し、ギュウギュウに詰めて座る、あるいは来客時用のサイドテーブルや予備の机などが横に添えられるなどになりそうだが、何の説明もなく普段と違うテーブルが鎮座しているため、一部では伸びるテーブルだった説が囁かれていた。
ちなみに、本作の「らしさ」がさりげなく添えられたのは、佳代が早起きして朝食を作り、結がそれを手伝うシーン。佳代の食事はいつもバランスが考えられているとして、結は言う。
「大豆とひじきの煮物はタンパク質鉄分食物繊維が豊富やし、なめこと豆腐のお味噌汁は体にすごい良いし」
ドラマの作り手も大豆とヒジキの栄養価は調べてみたものの、味噌汁については調べるのも説明するのも、なんだか面倒臭くなっちゃったのだろう。結らしいし、『おむすび』らしい。
さらに翔也の母・幸子(酒井若菜)が栃木から神戸の理容室に乗り込んできて、結と翔也は急ぎ米田家に集合。きっかけは翔也が米田家の婿になると勝手に決めて幸子にメールしたためで、結が促したと思い込んだ幸子はブチ切れ。元レディースの幸子VS.元ヤンの愛子の闘いが繰り広げられる。
「米田結」という名前が好きだからと言う翔也。いつもフルネームで呼んでいたことがここで生かされたわけだが、結婚すると宣言したものの、幼い結と翔也には現実が全く見えておらず、結は沙智(山本舞香)と佳純(平祐奈)、森川(小手伸也)にお金の心配をされる始末。
結は給料のほとんどを野球道具と体のメンテナンスに使っていたため貯金のない翔也と共に家計簿をつけ、節約を開始。500円玉貯金をしたり、カネをかけないデートをしたり、翔也は水筒二個持参で会社に行ったり、風呂は行水、シャンプー水で薄め、おまけに電車に乗らず、結を送った神戸から梅田まで走ったり......。
そんな中、用意されていたのは、野球を諦めた翔也の自信回復&再生イベント。開発中の炊飯器の試食会担当となり、社内モニター100人を集めることになるが、当日試食する社員が急に10人足りなくなる。あくまで一般人が主観で感想を述べるだけのモニターが100人から90人になったとて、さほどの問題ではないだろうに、その責任をキリキリしながら追及する開発部の女性。このテンパり具合を見るに、彼女も何も知らない新人なのだろうか。
神戸から梅田まで節約で走りまくった効果があったのかはしらないが、補充要員探しに走り回り、息を切らしながら戻ってきた翔也は野球部の面々を連れてくる。実は真っ先に野球部の顔が浮かんだが、行きづらかったそうだ。
かくして試食会は無事終了。スーツが似合っていると監督は翔也にエールを送り、翔也は新たな一歩を踏み出すことに。
そこから結と翔也は保留だった結婚話を進めるため、二人が考えた生活プランをそれぞれの両親の前で発表。翔也は会社で初めて責任ある仕事を任され、野球以外の仕事でもやっていける自信が持てた、これで人生終わりじゃねえと話す。一方、結も野球選手になる翔也を支えるために始めた仕事だが、美味しいだけでなく誰かが元気になったり健康になったり、その人の未来みたいなものを支えている気がすると言い、栄養士を生涯続けると宣言。
結と翔也が隣に並び、向かい側に両家がみっちり並ぶ構図がおかしいと思っていたが、実は愛子が栃木まで翔也の両親を説得に行き、いちご農家の仕事も手伝い、すっかり仲良くなっていたからであることがわかり、ここは意味ある構図で一安心。いったん話がまとまると、翔也の一族が正月早々に米田家になだれ込む非常識さは少々気になるし、二人の新居「十三から徒歩20分」はもはや別の駅が最寄りだろうも思うが(余談だが、十三はアクセスが非常に良く、家賃や物価など諸々安く、個人的に来阪時の常宿にしているホテルがある馴染みの場所だけに、「十三から徒歩20分」はどうも気になる)。
ともあれ、節約で買ったという結婚指輪を翔也が結に渡し、二人の新婚生活がスタート。と思ったら来週は東日本大震災が描かれるらしい。実はギャル云々より「平成の歴史=震災の歴史」がメインテーマになっていそうな本作だが、どうか丁寧に描いてくれることを切に願う。
文/田幸和歌子