最近よく聞くようになった"親ガチャ"という言葉。漫画『努力は裏切らない?』は、そんな境遇に悩みながらも、社会的な成功を掴み取った主人公の物語です。しかしその裏側には、驚くべき真実も......。話題作『先輩は綺麗な人だった』でも知られる作者・理系女ちゃん(@rikejo_chan)さんに、執筆の背景を伺いました。
恵まれない家庭から努力で一発逆転?
自分の家庭を"親ガチャ失敗"と感じていた主人公のきらら。一生懸命勉強に打ち込んで東大に入学しても、自分より恵まれた環境で育った人々に出会うことで、さらに劣等感を感じるように。
しかし彼女は逆境に負けず、大学で人脈を広げたり、研究活動に励んだりと、努力を重ねていきました。そしてついには世界的な科学雑誌に論文が掲載され、海外の有名大学院に進学する権利を勝ち取ります。
その一方で、本作の後半ではきららの高校の同級生・光が登場。彼女によると、きららが成功したのはSNSでの呟きがきっかけで、論文も海外の大学院進学も努力の結果ではないといいます。そして、「努力は裏切らない」と言う人間は「嫌い」だと断言するのでした。
「現実の人間関係を反映しています」
──きらら=悪人、光=善人という簡単な対立構造ではないところが現実的だなと感じました。光が知っているきららが彼女のすべてではないので「きらら最低!」とは言い切れないな...と。作品にこのような余白を残した意図を教えてください。
きららを一方的に悪役とせず、光もまた完全な善人ではないという設定は、現実の人間関係を反映しています。きららの成功には誇張や偽りがあるかもしれませんが、それでも彼女自身が感じる「逆境」や努力は完全に嘘ではありません。現実では、他人がどのように見えるかは視点によって異なり、それを作品の中で描きたかったため、あえて余白を残しました。
──このテーマを描くにあたって、キャラ設定やセリフなどで気を付けた点はありますか?
キャラクターが単純に「良い人」や「悪い人」に見えないように、彼らの背景や内面を深く描くことに注力しました。特に、きららの努力する姿勢や、光の批判的な視点のどちらも完全に正しいわけではないことを強調し、それぞれが自分なりの価値観で生きている姿を表現するよう心がけました。
恵まれない環境から努力で成功をつかんだと自負しているきららと、そんな彼女のことを真面目に努力せず成功した"恵まれた人"だと思っている光。同じ出来事でも人によって受け取り方が異なることを痛感します。