【虎に翼】原爆裁判に幕。判決文に込められた寅子(伊藤沙莉)たちの「強い思い」と今、朝ドラで読み上げる「意義」

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毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「意義あるクライマックス」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

 【虎に翼】原爆裁判に幕。判決文に込められた寅子(伊藤沙莉)たちの「強い思い」と今、朝ドラで読み上げる「意義」 pixta_32725939_M.jpg

NHK連続テレビ小説『虎に翼』の第23週「始めは処女の如く、後は脱兎の如し?」では、一つのクライマックスを迎えた。

終盤となった今週、「年月」が一つのキーワードとして様々な変化が描かれる。

直明(三山凌輝)に子どもが誕生し、猪爪家は賑やかになる一方、寅子(伊藤沙莉)は更年期障害にしんどさを感じつつ、長年悩まされてきた「お月のもの」から解放されることを待ち遠しく思う。

しかし、出口がなく、進行していく一方なのは、百合(余貴美子)の認知症だ。百合と仲良しで一緒にいる時間の多い優未(毎田暖乃)は、他の家族に押し付け、何もしないのどか(尾碕真花)に対して不満が爆発。家族に何か問題が起こった場合、結局、優しい人、よく気づく人ばかりに負担が偏り、やがては過労や心労で潰してしまいそうになるのはケアの問題でよくあることだが、優未には幸いよね(土居志央梨)と轟(戸塚純貴)らの事務所という居場所がある。

また、のどかに蹴りを入れた優未が謝りたくないと言うと、遠藤(和田正人)は優未の意思を尊重しつつも、口や手を出すと相手との関係性が変わってしまうこともある、その責任を自分が負うことが必要だと優しく諭す。寅子もよねも轟も「手が出てしまう人」であるだけに、彼らに欠けた冷静さを持つ遠藤をパートナーに選んだ轟の人を見る目の確かさも感じる。

さらに、優未が飛び出した星家では、のどかが謝罪し、かつて子どものことを全て義母・百合に丸投げし、家庭を顧みなかった航一(岡田将生)も、今は交代制で百合の介護に参加している。年月により、良い方の変化もあるのだ。

そんな中、長年続いてきた竹もとを受け継ぐために努力を続ける梅子は、一番の竹もとファン・桂場(松山ケンイチ)にあんこの味をようやく認められる。しかし、そこに高齢の笹山(田中要次)から寿司屋を受け継ぐ自信がなく、店をたたむ決意をした道男(和田庵)がやって来ると、梅子が声をかけ、道男の苦手な部分を自分が請け負うと言い、2人助け合いつつ一緒に新たな店を始めるのだ。和菓子屋と寿司屋、なんだかカオスな展開だが、これも長い年月が生んだ新たな味わいなのだろう。

しかし、今週のメインテーマはなんといっても、寅子が汐見(平埜生成)らと担当することになった「原爆裁判」だ。

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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