『77歳の現役講師によるマナーの教科書本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』 (岩下宣子/主婦の友社)第10回【全10回】
50年以上の長きにわたり、多くの人々にマナーを教えてきたマナー講師の岩下宣子さん。その著書『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』(主婦の友社)は、岩井さんが講師をするなかで実感した、人生で本当に大切だと思ったマナーをまとめたものです。あたたかく、ときに厳しく綴られた77の項目には、マナーを超えた、より豊かな人生を送るためのヒントが満載! きっと、あなたの心に響くはずです。今回はこの本の中から、思い描く自分に近づき、明るく軽やかに生きるためのふるまい術をご紹介します。
※本記事は岩下宣子著の書籍『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』から一部抜粋・編集しました。
お金は裸のまま渡さない
何人かでいっしょに贈り物をしたときなど、お金を立て替えていただく機会があると思います。後日、それをお返しするとき、「三千円お返ししますね」などとお財布から直接お金を渡すのは失礼に当たります。支払い以外のお金は裸では渡さない――これは日本人特有の美意識かもしれません。
お金はありがたいものです。一方で、「お金に固執するのは卑しい」という感覚が日本人にはあります。お金はそのままだと、なんとなく生々しい感じがあるのでしょう。人に渡すときにはなおのこと。封筒やポチ袋に入れてお渡しすることの根底には、「見せない」配慮があるんですね。ただ、普段ちょっとしたお金を渡すときに封筒を持っているとは限りません。ティッシュペーパーにくるむ? ゴミとまちがえて捨ててしまうかもしれませんね。
そんなとき、少額のお金であれば、懐紙(かいし)に包んで渡すのがおすすめです。「懐紙」とは、ふところに入れて持ち歩くための小さめの和紙のこと。使われ始めたのは平安時代といわれ、お茶席でお菓子をのせたり、メモ用紙にしたり、鼻をふいたりなど用途は多彩。季節に合わせた美しい柄の懐紙もあり、お値段は一束数百円とお手ごろで、使わない手はありません。
懐紙にお金をのせ、折り紙の要領で包みましょう。ランチ代などの返金や旅館の心づけなどにもぴったりです。
最近は現金を使う機会が減ってきました。「現金を裸で渡さない」という奥ゆかしい文化も、遠くない未来に消えてしまうのでしょうか。でも、それはもったいない。文化も懐紙も、さりげなく伝えていけたらいいなと思います。
『包んで渡すのは、お金の生々しさのカバー』。