常に複数の選択肢をもってプレーする/遠藤保仁「一瞬で決断できる」シンプル思考(8)

常に複数の選択肢をもってプレーする/遠藤保仁「一瞬で決断できる」シンプル思考(8) 4.jpgなぜ体力測定B判定でも、日本代表として世界を相手に活躍できたのか?

数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意を大公開!
「やることが山積みで全然前に進まない」「頭の中がごちゃごちゃでつらい」などの悩みをかかえているあなた、本書『「一瞬で決断できる」シンプル思考』から考え方のコツを学びましょう。

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選択肢が多ければ、どんな状況にも対応できる

スタンドからサッカーの試合を見ていると、「あそこにフリーの選手がいるのに、なぜパスを出さないんだ」と感じるときがあると思う。もちろん、あえて出さないという選択をしているときもあるが、ボールをもっている選手には、そのフリーの選手が見えていないことも当然ある。

鳥の目で高いところから全体を見渡すことを「俯瞰(ふかん)」というが、サッカー選手が俯瞰するような視点をもち、どこに選手がいて、どのスペースが空いているかをひと目で把握することができれば、決定的なチャンスを生み出すことができるだろう。サッカー選手であれば、誰もが鳥の目をもちたいと思うはずだ。

だが、実際にフィールドでプレーをしているかぎり、鳥の目で全体をとらえることは簡単ではない。僕もたまに全体を俯瞰している感覚でプレーができ、すべてが先読み通りにいくことがあるが、何年かに一度くらいの出来事で、めったに起きることではない。どの試合でそういう感覚になったか、すでに思い出せないくらいだ。

現実に鳥の目でプレーをするのはむずかしいが、それでも理想として追求したいとは常日頃から考えている。俯瞰することを意識していると、視野が広がり、自然とプレーの選択肢が増えていく。それは、先読み力がアップすることにつながる。

サッカーの目的は、ゴールを奪って勝利することだ。だが、ゴールへの道筋はひとつとはかぎらない。FWが点をとれないなら、MFが点を決めればいいし、DFだっていい。GKが点をとってもかまわない。相手の守備陣を崩す方法もひとつだけではない。ロングパスが有効かもしれないし、ショートパスをつないだほうが可能性は高いかもしれない。

山登りも登山道はひとつだけではない。富士山の頂上にたどりつくための登山ルートは複数ある。ゴールへの道筋は、いくつもある。

それはサッカーでプレーするときも同じだ。「こうすれば点がとれる」というルートはひとつだけではない。極端な話、右サイドからの攻撃ばかりに頼れば、相手チームは右サイドを徹底的に潰しにかかるから、ゴールは遠くなる。左サイドや中央からの攻撃のほか、ときにはロングシュートも繰り出すなど、さまざまな方法で攻めるから、相手の裏をかいてゴールに結びつけることができるのだ。

だから、僕はプレー中、常に複数の選択肢をもつようにしている。プレーの選択肢をたくさんもっていればいるほど、どんな試合展開にも対応でき、ゴールの可能性が高まるはずだから。

 
探求心があれば失敗なんてない

車の運転にも同じことがいえる。目的地はひとつでも、そこにたどりつくルートはいくつもある。カーナビの指示通りに運転するほうが便利で、結果的に早く目的地につくことができるかもしれない。でも、それが最善のルートとはかぎらない。

たとえば、この先の道が渋滞しているようなら、カーナビが示すルートから外れて、抜け道を探したほうが結果的に渋滞に巻き込まれることなく到着できる可能性もある。だから、僕は運転をするときは、「こっちから行ったほうが早いのでは?」と自分の勘を頼りにわざとカーナビのルートから外れることがよくある。

結果として到着が遅くなったり、道に迷ってしまったりすることもあるが、カーナビのルートの到着時刻よりも早まることもある。それは自分の判断が正しかったわけだから、素直にうれしいし、自分オリジナルの抜け道ルートになる。

逆にルート選びで失敗したとしても、「今度からこのルートは選ばないようにしよう」という教訓になる。次につながるという意味で、経験値が高まるわけだ。

そもそも「失敗」なんて言葉自体、存在しないのかもしれない。その方法ではうまくいかないことがわかったから、それは成功といえる。こうして使えるルートの選択肢を広げていくことで、結果的に移動の時間を効率化できるのである。

仕事でも多くの手段をもっているほうが、状況に応じて臨機応変な対応をとれるはずだ。会社のプレゼンでも、数字にこだわる上司と、情に流されやすい上司とでは、攻め方が異なるだろう。ときにはデータを示して論理的に語り、ときには情に訴えるプレゼンができる。そういう選択の幅をもったチームや人が成果を出すのだと思う。

 

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撮影/佐藤 亮

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遠藤 保仁(えんどう やすひと)

1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガを経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとして、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録をもつ。178㎝、AB型。

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『「一瞬で決断できる」シンプル思考』

(遠藤保仁/KADOKAWA)


「国際Aマッチ出場数最多記録保持者」など、数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「一瞬で決断できる」シンプル思考の原点に迫る! 年齢を重ねるごとに進化する「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意44。

 
この記事は書籍『一瞬で決断できる」シンプル思考』からの抜粋です。

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