なぜ体力測定B判定でも、日本代表として世界を相手に活躍できたのか?
数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意を大公開!
「やることが山積みで全然前に進まない」「頭の中がごちゃごちゃでつらい」などの悩みをかかえているあなた、本書『「一瞬で決断できる」シンプル思考』から考え方のコツを学びましょう。
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ボールへの執着が精度の高い予測を生む
不思議なことに、年齢を重ねるごとに、これまで以上に「試合に勝ちたい」という気持ちが強くなっているような気がする。
20代の前半くらいまでは、華麗にボールをまわして、かっこよくゴールを奪うのが理想のサッカーだと考えていた。いわゆる泥臭いサッカーは、できるかぎりしたくない、というのが本音だった。
しかし、日本代表に選ばれるようになってから、そういう考えは徐々に変わっていった。ジーコ監督のときは日本代表として2006年のドイツ・ワールドカップに行ったものの、一度もピッチの上に立つことは叶(かな)わなかった。GK(ゴールキーパー)以外のフィールドプレーヤーとしては、ただ一人悔しさを味わった。
この頃から、自分はボールへの執着がほかの選手と比べて少ないことを自覚していった。当時、日本代表のチームメイトであった秋田豊選手からも、その点については厳しく指摘されたことがある。
いろいろな人から刺激を受けるうちに、もっとボールに執着して、泥臭くボールを自分のものにしていくことの大切さを痛感するようになっていった。そして、その頃から、しつこく敵にプレッシャーをかけに行ったり、ボール際では激しく当たりに行ったり、チャンスと見れば自らの体を投げ出してスライディングでボールを奪うことも厭(いと)わなくなっていった。それまでは不得意なプレーだったが、不格好な形でもボールを奪いに行く姿勢は、世界で戦ううえで重要だと思い知ったのである。
「ボールをがむしゃらに追いかける」というサッカーの原点に立ち返ったような感覚で、当時の自分にはとても新鮮に感じられた。
人の目を気にするよりも「こだわり」を
ボールに執着するようになると、守備のときの先読みの精度も上がっていった。やはり、なんとしてでもボールを奪ってやろうという意識でいると、「ここにパスが出そうだ」「ここにボールが落ちてきそうだ」と、頭をフルに使って考えるからだろう。
実際、海外の監督の多くは、「絶対に守備の場面で引いたらダメだ。どんどん取りに行け」というスタンスである。
ボールが奪えそうなところを予測して、思い切って取りに行く。うまく予測が当たり相手ゴールに近い位置でボールを奪うことができれば、一転、チャンスになる。もちろん、取りに行った結果、敵にかわされてしまうことも考えられるが、ダメなら次善の策を考えればいいし、味方がフォローしてくれる。そのためのチームメイトである。仲間を信頼しなければサッカーは戦えない。
反対に、「奪いに行って失敗したらピンチになるから、引いておこう」という姿勢でいると、プレッシャーを受けない敵の選手は、イキイキとプレーをし、こちらはピンチを招くことになる。守備でも先手をとることが、有利に試合を運ぶために重要なのである。
世間では「執着は手放したほうがよい」と言われることがあるが、本当にそうだろうか。もちろん、些末(さまつ)なことにとらわれてしまえば、大事なことを見失いかねないし、力も分散してしまう。
しかし、人生においては、こだわりをもって妥協することなく取り組むべきこともある。それは仕事であっても趣味であってもいい。とことん追求できるもの、絶対に譲れないものをひとつでももっていると成果が出やすいし、人生も豊かになる。場合によっては、「自分にしかできないことをやる」「とにかくお金を稼ぎたい」などの執着が成果につながるときだってあると思う。
また、他人の目ばかりを気にして、「泥臭くやること」「がむしゃらにやること」をどこか躊躇(ちゅうちよ)してはいないだろうか。それは一度きりしかない人生において非常にもったいないことであると、僕は自分の経験を通して伝えたい。
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撮影/佐藤 亮
遠藤 保仁(えんどう やすひと)
1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガを経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとして、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録をもつ。178㎝、AB型。
『「一瞬で決断できる」シンプル思考』
(遠藤保仁/KADOKAWA)
「国際Aマッチ出場数最多記録保持者」など、数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「一瞬で決断できる」シンプル思考の原点に迫る! 年齢を重ねるごとに進化する「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意44。