なぜ体力測定B判定でも、日本代表として世界を相手に活躍できたのか?
数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意を大公開!
「やることが山積みで全然前に進まない」「頭の中がごちゃごちゃでつらい」などの悩みをかかえているあなた、本書『「一瞬で決断できる」シンプル思考』から考え方のコツを学びましょう。
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「先読み力」の磨き方
「先を読む力」は、個人のセンスに左右される部分もあるだろうが、ある程度は自分で磨くことができると考えている。僕の場合、試合中や練習中だけでなく、ふだんの生活の中でも予測することがクセになっている。
たとえば、車の運転をしているとき、どの車線を走れば前がつまることなく、スムーズに流れに乗ることができるか、常に考えている。前方の混雑状況だけでなく、バックミラー越しに映る後方の交通量や道路状況なども考慮しながら、自分が走る車線を選択している。
また、家族といっしょにスーパーへ買い物に出かけたときも、どのレジに並ぶべきか、いつも予測しながら決めている。単純に列をつくっている人の数を見るだけでなく、買い物かごの中に入っている商品の数もチェックする。当然、並んでいる人の数が多くても、買い物かごの中の商品が少なければ、列は早く進むはずだ。
見逃しがちなのは、レジを打つ店員の熟練度。ベテランの店員だと手際がいいので、素早くお客さんをさばいていくけれど、反対に、レジ打ちに慣れていない新人のアルバイトだと倍の時間がかかることもある。こうした要素を総合的に判断して、自分が並ぶべき列を決めていくのだ。もちろん、迷ってもたもたしていれば、他のお客さんに先を越されてしまうので、瞬時に判断するスピードも重要だ。
このような日常生活での小さな予測を、意識して何度も繰り返していくと、精度も高くなり、判断スピードも上がる。「先を読む力」がアップしているのだろう。
たかが車の運転、たかがレジの列かもしれない。遊び感覚で楽しんでいるだけで、実際にサッカーのプレーにどう影響しているかは正直わからない。だが、どんなことでも予測する練習を繰り返すことで、確実に精度を高めることはできる。少なくとも僕は、遊び心をもちながら日常を過ごすことは、サッカーのプレーの質を高めることにつながると信じているのだ。
遊び心は、柔軟な発想力を鍛えるうえで欠かせない。そして、「アイデアが湧く=選択肢が増える」ことにもつながる。
少し先の未来を自分の頭で考えてイメージしておくことの大切さはサッカーにかぎらず、仕事でも同じだと思う。自分が置かれた状況を素早く把握し、次に何が起こるか、何をすべきかを予測しておく。そのとき、いくつかの選択肢を用意しておくことができれば、状況の変化にも柔軟に対応できるはずだ。
進化論を唱えたダーウィンは、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」という考えを示したといわれている。
まさに、その通りだと思う。
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遠藤 保仁(えんどう やすひと)
1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガを経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとして、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録をもつ。178㎝、AB型。
『「一瞬で決断できる」シンプル思考』
(遠藤保仁/KADOKAWA)
「国際Aマッチ出場数最多記録保持者」など、数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「一瞬で決断できる」シンプル思考の原点に迫る! 年齢を重ねるごとに進化する「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意44。