なぜ体力測定B判定でも、日本代表として世界を相手に活躍できたのか?
数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意を大公開!
「やることが山積みで全然前に進まない」「頭の中がごちゃごちゃでつらい」などの悩みをかかえているあなた、本書『「一瞬で決断できる」シンプル思考』から考え方のコツを学びましょう。
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前の記事「相手の目から「先読み」のヒントを得る/遠藤保仁「一瞬で決断できる」シンプル思考(2)」はこちら。
フリーの選手にパスを出さない理由
ありがたいことに「未来が見えているようなプレーをする」と評されることがある。僕の1本のパスから相手の守備陣が崩れ、味方が華麗にシュートまで持ち込むような展開になると、そのような印象を与えるのかもしれない。
たしかに、「自分がこういうプレーをすれば、こういう展開になるはず」と予測しながらプレーしているのは間違いない。その予測通りにプレーをして、ゴールに迫ることも少なくない。
しかし、いつも予測通りになるとはかぎらない。そもそも相手が予測通りに動いてくれるとはかぎらないし、僕が自分の予測通りのプレーをしたとしても、味方との連携がうまくいかずにボールを失うこともある。むしろ9割以上は、予測通りにいかないといってもいい。
試合中はめまぐるしく状況が変化していく。そうした状況を瞬間的に的確にとらえながら、予測と判断を繰り返し、それをプレーとして表現する。その繰り返しである。感覚としては、車の運転に近いかもしれない。あまり自覚はしていないかもしれないが、信号や道路標識、歩行者や他の車の動きなど、時々刻々と変わっていく状況の中、予測と判断を繰り返しているはずだ。
そのため、試合中は体を動かしながら、いつも頭の中はフル回転の状態だ。中学時代の監督から「体が疲れるのは当たり前。頭が疲れる選手になりなさい」とよく言われてきた。よく状況を観察して、頭で考えて予測し、一瞬で判断し、プレーをしなさいということだ。その大切さはプロとなった今も変わっていない。
プレー中はボールをもっているときも、もっていないときも常に先を予測し、3~4パターンくらいの選択肢をもつようにしている。ひとつの選択肢しかもっていなければ、その選択肢を敵に潰されてしまったとき万事休すである。
たとえば、自分がこのスペースでパスを受けたとき、最もゴールに近い位置にいるFWのA選手にパスを出すか、それともA選手とは逆サイドにいるMF(ミッドフィルダー)のB選手にパスを出すか、あるいは近くにいるC選手とパス交換して敵の動きをうかがうか、もしくは味方選手のマークがどれも厳しくパスを出してもボールを失う可能性が高い場合は、後方にいるDFにバックパスをして組み立て直すか......といった具合である。
もちろん、状況は時々刻々と変わっていく。3~4つの選択肢がすべて消えて、新しい選択肢が生まれることもある。したがって、常に最善の判断をするために、予測を繰り返していくしかないわけだ。これがダメなら次、こっちがダメなら次、というように。
サッカーの試合を見ている人は、「あの選手がフリーなのに、なぜ遠藤はパスを出さないんだ」とやきもきするかもしれない。でもそれは僕なりに状況判断をして、捨てた選択肢なのである。
「次はこうなって、こうなるだろう」と予測する練習は、中学生ぐらいのときからしていた。練習や試合の最中はもちろんのこと、自分が出場していない試合を見ながら予測するのも当たり前だった。それがクセになり、試合を見れば見るほど自分の予測が当たる確率は上がっていた。
「先を読む力」はサッカーのトレーニングと一緒で、「予測→検証→改善」の反復練習をすればするほど予測の精度は向上していくものだ。
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遠藤 保仁(えんどう やすひと)
1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガを経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとして、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録をもつ。178㎝、AB型。
『「一瞬で決断できる」シンプル思考』
(遠藤保仁/KADOKAWA)
「国際Aマッチ出場数最多記録保持者」など、数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「一瞬で決断できる」シンプル思考の原点に迫る! 年齢を重ねるごとに進化する「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意44。