劇団☆新感線の『薔薇とサムライ2‒海賊女王の帰還‒』で今回が5作目となる当たり役・石川五右衛門を演じる古田新太さんと、それを迎える大役を演じる生瀬勝久さん。長い付き合いの2人の、いままでとこれからを伺いました。
まったく趣味の合わない
仲の良いふたり
――おふたりとも、関西の大学の学生演劇で活躍されていましたね。
生瀬 スゴイ若者が劇団☆新感線に入ったと聞いたのが、古田くんの存在を知った最初です。
古田 舞台の初共演は、生瀬さんが4代目の代表を務めていた劇団そとばこまちの作品でした。
生瀬 あとはプロデュース公演とか、テレビの仕事で一緒になることが多かったね。
古田 テレビのレギュラー番組があったから、その頃は週2回会ってた。
生瀬 深夜のコント番組「週刊テレビ広辞苑」で、古田くんが大阪城を丸裸でロケしてたんです。
古田 ちゃんとパンツはいてるんですけど、途中ですられる設定(笑)。芸名の古田新太は、実は親父の名前なんですけど、親父が会社の同僚に「最近、金髪ですぐ脱ぐ芸人が同じ名前でテレビに出ているけど、関係あるの?」って聞かれて、「ない!」っていう話があった頃です。生瀬さんの家がうちの劇団の稽古場の近所で、おいらが働いていたストリップ劇場の前だったから、よく寄ったりしてました。
生瀬 泊まったりして、よく遊んでたね。当時から2人とも変わらないねぇ。
古田 そして、まったく趣味が合わない。生瀬さんはアウトドアでギャンブル好き。おいらはインドアで、博打はやらない。
生瀬 僕はずっと釣りが趣味で、若い頃、古田くんと行ったとき、古田くんは行きの車でずーっと酒を飲んでいて、僕が釣りをしている海に飛び込んで、いきなり泳ぎだした。しかも水着じゃないんだよ。パンツで泳いでた。そんな時代を経て、僕たちは関西から東京へ拠点を移して約30年です。
人生の折り返し?
人生のゴール?
―― 今回の舞台の会見で生瀬さんは、いまが折り返し地点だとおっしゃっていました。
生瀬 いま、僕61 歳なんです。大体120まで生きるのでやっと折り返し。
古田 (笑)。生瀬さんは釣りだとかいろいろ趣味をもっているけれど、おいらは無趣味
だから昼間から飲むしかない。意識としては折り返しというより、もうゴール。公演中は飲まないから、唯一の健康法は舞台に立つこと。だから舞台をやらなくなったら......。
生瀬 すぐダメだろうね。何十年も前から、そうですよ。
古田 20代前半から、まったく生活が変わってないです。
生瀬 かっこいいですよね、古田は。羨ましいなと思うけど、こんなパンクな生き方、とても真似できないですから。
古田 逆もありますよ。生瀬さんは腰が痛いというけれど、内臓は健康。おいらはいろいろ調子の悪いところもあるから。
生瀬 でも、古田に酒やめた方がいいよって言ったことは一度もない。生き方は、人それぞれだから。60歳といってもいろいろな60歳がいるし、何歳になったからとか関係ないし。
古田 自分が納得できれば、どんな生き方でもいい。
生瀬 古田はパンクなのに、すごくちゃんとしてるよね。だから余計にタチが悪い。僕は健康維持はちゃんとしてますよ。1時間半かけて、ウォーキング。5年前に新感線の『髑髏城の七人Season風』のお話をいただいて、少し体を作っておこうと始めたら、持病の腰痛が治りましたからね。ずっと続けてます。僕は職業俳優だと思っているので、今後のビジョンとかは特に考えず、とにかくいただいた役をちゃんとやる。仕事が途切れないのがいちばんの
モチベーションかな。
古田 おいらは今後のビジョン、あります。若くして、伊東四朗さんになる。
生瀬 (笑)。いいね~。
古田 かっこいいですよ。面白い芝居も怖い芝居もできて、いまだにふざけている。この
間もテレビ局の楽屋で外から「コンコン」という声がした。
生瀬 声! 音じゃないのね。
古田 どうぞ開いてますよって言ったら、「ニン!」。ああいうじいちゃんになりたいな。
取材・文/多賀谷浩子 撮影/齋藤ジン ヘアメイク/田中智子(生瀬)、田中菜月(古田) スタイリスト/中谷東一(生瀬)、渡邉圭祐(古田)