「芸人になれると思わなかった」77歳芸歴6年目の若手芸人「おばあちゃん」に聞く、10個の「人生をポジティブに楽しむ秘訣」《インタビュー》

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77歳にして芸歴6年目のお笑い芸人「おばあちゃん」をご存じでしょうか? 吉本興業が運営するお笑いタレントの養成所・NSC(吉本総合芸能学院)になんと70歳で入学し、現在は神保町よしもと漫才劇場に所属。「人生100年時代」にぴったりの逸材とあって各種メディアも大注目、このほど初めての著書『ひまができ 今日も楽しい 生きがいを』(ヨシモトブックス:発行)を出すなど大活躍中。

「毎日が発見ネット」ではそんな「おばあちゃん」に取材を敢行。10個のポイント別に、「おばあちゃん流 人生をポジティブに楽しむ秘訣」をご紹介します!

(取材・構成・文=荒井理恵 撮影=川口宗道)


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1.どんなに立派な建物でも基礎が大事。だからなんでも「基礎」から学ぶ!

NSCに入ったのは「舞台の勉強をしたい」と思ったからで、芸人になれると思わなかったんです。当時、シニア劇団でちょっと役者をやっていたのですが、舞台の専門用語もまるでわかっていなかったので、とにかく基礎から勉強したくて。

何せ、こどもの頃から「基礎ができてなかったら、どんなに立派な建物でも倒れる」っていうのが頭にありましたから。野球でも「基本ができてないとダメとか」よく言われますし、ノーベル賞を獲った方も「基本」っておっしゃるでしょ。でもNSC以外は年齢制限で断られてしまったので、よしもとさんが受け入れてくださってほんとにうれしかったですね。

2.王貞治さんが教えてくれた「復習」の大切さ。それが力になる!

NSCではとにかく「この先生は何を教えてくれるのか?」と必死でついて行きました。何せ「ボケ」とか「つっこみ」とか言われてもよくわからなかったですからね。家からNSCまでは片道2時間ちょっとかかるんで、帰宅が夜遅くなることもあるんですけど、その日にやったことはぜんぶまとめてファイリングして、なんかあったら見られるようにしておきました。

昔、王貞治さんが「相手の投手の性格や球種、自分が打てなかったのはどういう球かと全部ノートに書く」ってお話されてたことがあって。あの王さんだって「データを記録しておかないと無理だよ」っておっしゃってるんですから。

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3.「恥をかいてもしょうがない」って自分に言い聞かせる

わからないことは聞く。できないことはできないってはっきり言う。「恥ずかしい」なんて言ってたら、ぜったいボロでますから。例えばスマホなんていい見本で、私はよしもとに入ってからガラケーからスマホにしたくらいで、まあ慣れるまで大変でしたよ。

若い子たちの言葉もわかんないから聞きます。「こしパン(=腰パン)」って言われた時は、本気で「なんのパンだろう?」って思ったので笑われましたけど、それはそれでいいじゃないですか。いまはなんでもスマホでわかりますからね。「わかんないから、調べてくれる?」っていったほうが早いし、すごく教えてくれます。

4.なにごとも「地」でいけばいい

(お笑いの)舞台でも変に力まずに「地」でいくようにしています。いまは、(舞台でのネタは)川柳で「高齢者あるある」を笑いにしてますけど、みんな大笑いというより「クスッ」って感じです。若い人には共感できないネタかもしれないけれど、こういう「あるある話」を聞いた経験があれば、なんとなく「年寄りってそうなのかな」ってイメージしてもらえるし、そのほうが世の中もうまく行くようにも思うんですよね。

こないだもエレベーターの乗り口の真ん中におじいちゃんが待ち構えていて、エレベーターの中にいた若い人が降りられない状態になってたんですよ。おじいちゃんは「早く降りろ、乗れないじゃないか」みたいに言うから若い人がムッとしてて。そういうときは若い人に「ごめんね。年寄りってこんな風になっちゃうの」って言うと、ニコッと笑ってくれるんですよね。そうやって声をかけるだけでも、あとの気分がいい。私の芸を通じてそんな感覚が伝わったら嬉しいですね。

5.若い子ばかりの状況はアウエーじゃなくて「嬉しい」こと。若いエネルギーをたくさんもらえてラッキー!

NSCは若い人ばかりですから、「(数百人いるNSC生のうち)この中の10人でも私とコミュニケーションとってくれたらラッキー」と思っていました。そしたらみなさん、ほんとによくしてくださったので、ラッキーなんてもんじゃないですね。

おそらく芸人の世界では若い子たち同士はどうしてもライバルになってしまうと思いますが、私はライバルにならないですし、向こうもそういう目で見ていません。もちろん私もそういう目で見ていないし、だからみんながテレビに出たりするとうれしくて。全部ちゃんと観て、観られない時は録画して「観たよ」ってLINEして、「あ、深夜だった。いけない!」なんてなります(笑)。

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6.腹が立つときは「フンッ」とシャットアウト。引きずらない!

最近はテレビのニュースを見てると腹が立ちますよね。こっちはひーひー生活してるのに政治家は「裏金」作るし...そういうときは「フンッ」と声に出してからスイッチを切ります。そうするとケロッとします。

実際、この年になると引きずっても考えて解決することって何もないじゃないですか。いくつまで生きるんだろうとか、年金なくなったらどうしようとか、そんなの考えたってどうにもならないですからね。だったら普段から無駄をなくすようにすればいいわけで、必要以上に悩まない方がいいですよ。

7.大事なのは「感謝」。年寄りだから「やってもらうのが当たり前」なんてない!

年寄りだから「やってもらうのが当たり前」って考えの人、結構いますよね。でもそれは違うし、やってもらって「感謝」だと思います。本当に「ありがとう」は魔法の言葉です。感謝はちゃんと相手に伝えないといけないですよね。

もし知らないことを「教えてください」って言って相手に「やだよ」って言われたとしても、まずは「知らない」自分が悪いんです。その人は忙しかったのかもしれない。「悪いのはまず自分」っていう気持ちも大事だと思います。それで切り替えて、ほかの人に聞けばいい。

8.健康第一! 自分が倒れたら迷惑かけるし、「死んじゃった?」って思われてもいけないし

健康法で続けているのは「テレビ体操」。できないときは録画もしてますよ。あとはよく寝ることと食べることかな。酒とタバコ以外は好き嫌いなしでなんでも食べます。

以前、「うちはなんでも食べます」って答えたら「養豚場かい?」って言われて「私は豚かいって!」って大笑いしました(笑)。バランスは考えますし、なるべく手作りのものを食べるとか、そういう時間はなるべく惜しまないようにしてはいますが...いまは忙しくて、おとうさん(夫)がやってくれてます(笑)。

9. 時間にはたっぷり余裕を持って「歩く」

膝の手術をしたせいで歩くのが遅くて、(スマホの)乗換案内で表示される電車から必ず1本ずつずれちゃうからなるべく余裕をもって家を出ます。手術をしてから「歩く」大事さはすごく感じますね。

実はよしもとに入る前は杖をついてたんです。でもそれを見られちゃったら学校に入れてもらえないと思ったから、折りたたみの杖をかばんの中にいれて見つからないようにして。学校から離れて「疲れたわ」と思うと杖を出す(笑)。NSCへの入学の条件も「6階まで階段であがること」だったから、杖ではなく両手で手すりを掴んで上がりましたね。おかげで筋力もついてやせましたよ。

10.70歳になったから「好きなこと」ができる! 私の人生なんだから、思いっきり楽しまなくちゃ!

「70歳だからダメ」じゃなくて「70歳だからできる」だと思います。歳をとったら年金もあって、贅沢はできなくても現役時代のように「働く=食べること」に直結しなくなる。そんな余裕ができてきた時こそ、物に執着するのではなくて「楽しみ」をみつけることが大事だと思うんですよね。

例えば若い頃にやりたいけどできなかったことがあるなら「いまやらないでいつやるんだ?」って。私もよく「70歳になってなんでよしもと?」って言われますけど、実は「70歳になったからできた」って思うんです。実際、70の前だったらどんなに入りたくてもよしもとには入れなかったかもしれないし、自分も70だったから、時間と費用が捻出できたのもありますし。膝の治療が終わった時に「さて、これから私の人生楽しまなくちゃ!」って思いました。もちろん顔もシミだらけで、体もボロボロですよ。でもそれって「勲章」ですよね。これまで生かせていただけたので、この先は世の中のために何かできることはないかなと思っています。

 
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