サッカー日本代表・酒井宏樹「嫌われる勇気を持っていなくても成功を収めることはできる」/リセットする力

24051828.jpgフランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、サッカーワールドカップロシア大会での活躍が期待されるサッカー選手、酒井宏樹。しかし彼は「弱気」で「人見知り」という性格の持ち主だった...。
サッカー選手に不向きなその性格をいかにして克服してきたのか? 本書『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』で、その具体的な方法を探っていきましょう。

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自分に合った考え方を探せばいい

「嫌われる勇気」という言葉を耳にします。これは、他人の顔色をうかがい、嫌われないように努めることがストレスになって本来の自分を発揮できないのであれば、「嫌われる勇気」を持つべきだという意味です。あるいは自分が嫌われ役を買って出ることで、チームがまとまるのであれば、そうすべきという考え方もあるでしょう。

ただ、はっきり言ってしまえば、僕には「嫌われる勇気」はありません。僕は自分の周りの選手や仲間を本当に大切にしたい。サッカーを始めてから今日まで、仲間を見捨てるような発言や素振りは、自分の性格的に一度もしたことはありません。むしろ、11人でプレーするサッカーは仲間ありきだと思っています。

そのため、いまのマルセイユでは、右サイドバックのライバル選手との関係も良好で、僕たちは「お互いに頑張っていこう」という関係で切磋琢磨(せっさたくできています。もしかすると、お互いにギラギラと意識して争うライバル関係こそ美しいと思われる人もいるかもしれませんが、僕はギラギラできるタイプの人間ではないし、これまでのサッカー人生はこのやり方でずっと続けてきていて、だからこそうまくいったとも感じています。

仮にキャプテンという立場であれば、状況によっては厳しいことを言わなければいけないときも確かにあります。しかし、そのキャプテンの発言が自分のためを思ってのことなのか、それとも単にストレス発散のためにキレているのかは、受け取る選手が一番よくわかっています。後者なら確かに嫌われるでしょう。でも前者の振る舞いは「嫌われる勇気」とは違うというのが僕の考えです。それは「嫌われる勇気」ではなく、無条件に相手を信頼しているがゆえの「信頼関係」ではないでしょうか。

また、いくら優れた個人がいても、個人プレーには限界があります

仲間を見捨てて、1人の選手が個人プレーに走ってしまっては絶対にチームは勝てません。だったら仲間と一緒に切磋琢磨していくことのほうが楽しいし、嫌われているよりも信頼関係で結ばれているほうが勝利をつかむ可能性は高くなるはずです。
 

「嫌われる、嫌われない」という観点に意味はない

こうした仲間を信頼する姿勢は、柏レイソル時代に数多く学ぶことができました。柏レイソルにヨンハさん(安英学-アンヨンハ)という先輩がいました。非常に経験豊富で、北朝鮮代表として2010年の南アフリカ・ワールドカップにも出場した選手です。それだけのキャリアを誇る人でも率先して練習に取り組み、当時若手の1人だった僕と同じ目線で話をしてくれました。

ヨンハさんが日頃から実践されていた「全チームメートへのリスペクトを忘れない姿勢」からは、本当に多くのことを学びましたし、ヨンハさんから忠告や進言をされて、心に響かない選手はいませんでした。

同じく柏レイソルでお世話になった先輩のキタジさん(北嶋秀朗-ひであき)は、ヨンハさんとは違って情熱的に「俺についてこい!」と率先してチームを引っ張ってくれました。キタジさんもピッチ上では絶対に手を抜かない人です。だからキタジさんから厳しい指摘を受けても、それは忠告としてチーム内に伝わっていきました。

この2人に共通していた点は、そもそも「嫌われる・嫌われない」という観点でアプローチをしていなかったことです。そして、ヨンハさん、キタジさんを擁する柏レイソルは2011年のJ1リーグで優勝しました。あのチームには嫌われている存在はいませんでした。だからこそ僕は、「嫌われる勇気を持っていなくても成功を収めることはできるんだ」と、自らの体験から信じています。

 

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撮影/千葉 格

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酒井 宏樹(さかい ひろき)

1990年4月12日、長野県生まれ。千葉県柏市で育つ。柏レイソルU-15、U-18を経て2009年にトップチームへ昇格。2010年にJリーグデビュー。2011年にはチームの主力として活躍し、チームのJ1優勝とともに、ベストイレブン、ベストヤングプレーヤー賞を受賞。同年10月にはA代表に初選出される。日本での活躍が評価され2012年にドイツ・ブンデスリーガのハノーファー96へ完全移籍。主力として活躍した後、2016年6月にフランスの名門オリンピック・マルセイユへ完全移籍。マルセイユ移籍後も確固たる地位を築き、不動の右サイドバックとして活躍。日本代表でも欠かせない存在として、2018年ロシア・ワールドカップでの活躍が期待されている。

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『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』

(酒井 宏樹/KADOKAWA)

「日本人は活躍できない」という前評判を覆し、フランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、世界の注目を集めるサッカー選手となった酒井宏樹。彼はいかにして「自信のなさ」と「メンタルの弱さ」を克服し、心を強くしていったのか。自然と心が強くなる具体的な方法をこれまでのエピソードをとおして初公開!

この記事は書籍『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46」』からの抜粋です。
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