キャシー中島さんの愛息・洋輔さんは、手芸家。刺繍や服飾をパリで学んだ後、手仕事の心を受け継いで、いま日本で活躍しています。最近はタッグを組んで一緒に仕事をする機会も増えたそう。これからの手作り界を見据えて、いまふたりが思うことを聞きました。
心やすらぐ時間を持ち続ける
キャシー中島 私はパッチワークキルト作家として生きてきました。考えてみると、ずっと続けてきたものってそれだけ。続けてこられたのは、きっと作るたびにいろいろな発見があるからでしょう。色の組み合わせや縫い方を発見するたびに、ああ、こんなふうになるんだなってわくわくします。
どうしようもなくつらい夜もね、家族が寝静まってから針を持ってちくちく縫っていると、いつの間にか気持ちが安らぐんです。
洋輔 僕も同じです。いまは、誰もが急いでいる時代ですが、僕自身も母と同じように、手作りする時間そのものに助けられてきました。
手を動かしている時間って、嫌なことを考えなくてすむ。無心になれるんです。たくさんの人にそれを知ってほしいと思っています。ひとつの作品を作るのに長い時間かかるんでしょう?って言われるけど、僕にしたら時間は長ければ長いほど楽しいですよ。
世代も手芸のジャンルも、ボーダーレスがいい
洋輔 手芸の魅力のもうひとつは、諸先輩たちと話して、たくさんのことを教えてもらう機会が持てることではないでしょうか。昭和時代の人は古いなんて言う若者がいるけど、本当にもったいない...。
キャシー中島 世代もですが、手芸そのものもボーダーレスになるといいですね。私はパッチワークキルトの殻を破りたい。キルトだから、刺繍だからこうしなくちゃって思わずに、みんなが気軽に楽しくできることを発信していきたいと思っています。洋輔なんか、新幹線乗りながらでも、私と話しながらでも手を動かしているものね。
例えば、既成服にちょっと刺繍する方法もいいわね。それだけで自分だけの服ができて、おまけに誰かに褒めてもらえたらすてき。人って褒められるのが一番うれしいですから。
人生の楽しみは、年を重ねるほど増える
キャシー中島 いま、ますます自分がエネルギー満ちていると感じます。若いときは子育てに夢中だったけれど、40代半ばになったら、「あなたはどんな仕事をやりたいの?」ってまわりの人が耳を傾けてくれるようになりました。50代になったら、それが具体的に少しずつ形になり、花開いて、60代になったら、いばっていられるようになった(笑)。みなさんも、それぞれの世界できっとそうなると信じてほしい。
他にアドバイスをするとしたら 60代になってもきれいでいられるように、お肌の手入れを(笑)。その日の汚れはその日に落とすほうがいいわ。結婚したてはお金がなくてエステにも行けなかったから、私はよくきゅうりやスイカの皮でパックをしていましたよ。
洋輔 そうそう、パックしてたよねー(笑)。こんな元気な母を近くで見ていると、僕もこれからが楽しみになりますよ。
キャシー中島(きゃしーなかじま)さん
キルト作家。ハワイアンキルトやパッチワークキルトの作品を数多く発表し、国内だけでなく、海外にも赴いてその指導にあたる。キルトの本場アメリカでの評価も高い。一方、タレント活動も。俳優・勝野洋の妻として、手芸家・勝野洋輔の母としてパワフルな毎日を送っている。著書は『キャシー中島のわくわくハワイアンキルト』『キャシー中島&洋輔のいつでもハワイアンキルト』(共にKADOKAWA)他多数。
勝野洋輔(かつのようすけ)さんキャシー中島さんの長男であり、手芸家。幼いころから手仕事をするキャシー中島さんの背中を見て育ち、自然にハワイアンキルトや編み物、刺繍を覚えた。2015年冬まで5年間、パリで刺繍や服飾を学び、帰国後満を持して手芸家としてデビュー。自身の作品を発表するほか、テレビ『すてきにハンドメイド』(NHK)の司会や、ラジオ『サタデービュー』(SBS)で"洋輔の手作りコンシェルジュ"のパーソナリティをつとめている。