「自分は障害者じゃない」と言い続けていた中学時代/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』(2)

「自分は障害者じゃない」と言い続けていた中学時代/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』(2) 2.jpg10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断された岩野響さん。中学校に通えなくなったのをきっかけに、あえて進学しない道を選んだ15歳の「生きる道探し」とは?
著書『15歳のコーヒー屋さん』を通じて、今話題のコーヒー焙煎士・岩野響さんの言葉に耳を傾けてみましょう。

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前の記事「発達障害のぼくがなぜコーヒー焙煎士になったのか/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』(1)」はこちら。

ぼくはアスペルガー症候群

ぼくにはアスペルガー症候群という発達障害があります。アスペルガー症候群は一般的に、知的障害や言語の発達の遅れはないものの、コミュニケーション能力など、対人関係がうまくいきづらい障害とされています。診断されたのは母いわく、小学校3年生のときだったそうです。

特性のひとつとして、記憶障害があるので、幼少の頃のことはほとんど覚えていません。小学生になってからのことも、忘れていることが多いです。

発達障害であることを受け入れることができたのは、じつは最近のこと。コーヒー屋さんをオープンする準備を進めていた頃でした。

診断されたのは小学生のときでしたが、病院の先生から「本人に伝えるのはまだ早い」と、止められたそうです。だから、幼少のぼくにとって病院は「母と一緒に電車に乗っていく楽しい場所」としか思っていませんでした。

中学に入り、ノートをとることも、宿題などの提出物を出すことも難しくなりました。部活動として始めたバドミントンも、何もかもができなくて困っていたとき、「それは、ひーくん(家族内でのぼくのあだ名です)が発達障害だからだよ」と、両親から説明されました。
といっても、すんなり「だからなんだ」とは思えませんでした。

「いや、もっとやればできるはず」
「やり方を変えればできるから」

そう思って、「自分は障害者じゃない」と言い続けていたそうです(よく覚えていませんが)。だけど、「発達障害だから」としか説明がつかないようなことがたくさんあって、いまとなっては、それも自分なんだなと思えるようになりました。

 

撮影/木村直軌

次の記事「小学校3年生で教室にいられなったぼく/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』(3)」はこちら。

 

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岩野 響(いわの・ひびき)

2002年生まれ。群馬県桐生市在住。10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断される。中学生で学校に行けなくなったのをきっかけに、あえて高校に進学しない道を選び、料理やコーヒー焙煎、写真など、さまざまな「できること」を追求していく。2017年4月、自宅敷地内に「HORIZON LABO」をオープン。幼い頃から調味料を替えたのがわかるほどの鋭い味覚、嗅覚を生かし、自ら焙煎したコーヒー豆の販売を行ったところ、そのコーヒーの味わいや生き方が全国で話題となる(現在、直販は休止)。公式ホームページはこちら「HORIZON LABO」コーヒー豆の通販はこちらで行っています。

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『15歳のコーヒー屋さん』

(岩野 響/KADOKAWA)

現在、15歳のコーヒー焙煎士として、メディアで注目されている岩野響さん。10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断され、中学校に通えなくなったのをきっかけに、あえて進学せずコーヒー焙煎士の道を選びました。ご両親のインタビューとともに、精神科医・星野仁彦先生の解説も掲載。

 
この記事は書籍『15歳のコーヒー屋さん』からの抜粋です

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